Dave Koz 「A New Day」(2020)
デイヴ・コーズの新作は、久しぶりのオリジナル・スタジオ・アルバムです。近年は、続編も作られた「アンド・フレンズ」名義の『Summer Horns』や、クリスマス企画アルバム、ライブ・アルバムなど活発な作品リリースが続いていましたが、ソロのスタジオ作品は2010年の『Hello Tomorrow』以来10年ぶりとなる新作です。デビュー作品から30年目、通算20枚目のアルバムという記念碑的作品になります。
参加ミュージシャンは、ダーレン・ラーン、リック・ブラウン、デイヴィッド・サンボーン、フィリップ・セス、ボブ・ジェイムス、ジェフ・ローバー、ポール・ジャクソン・ジュニア、マーク・アントワン、デイヴィッド・マンなど共演常連が集合しました。ほとんどの曲が、共作によるオリジナル新曲です。
ポップでキャッチーな「Summertime In NYC」は、R&Bシンガーのブライアン・マックナイトをゲストにむかえた曲。軽やかにスイングするコーズのソプラノ・サックスと、オーバー・ダビングしたマックナイトのスキャットがからむ、アダルト・コンテンポラリー・スタイルのハイライト曲です。
広大な景色を感じさせる「A New Day」(コーズとデヴィッド・マンの共作)は、ロマンチックに盛り上がるメロディが、普遍的なスタンダード・ポップスの趣きです。コーズの力強いアルト・サックスは、パンデミック下の世界でも希望を求めるメッセージを伝えているようです。
ボサノバ・リズムで奏でるマイナー・バラード「Long Goodbyes」は、ボブ・ジェイムス(ピアノ)をゲストにむかえた曲。ジェイムスの華麗なフレージングと、コーズの抜けのいいアルトが絡み合う絶品のコラボです。
「Side By Side」は、デイヴィッド・サンボーンとの掛け合いが素晴らしい好演。同じアルト・サックスの共演ですが、エッジの尖ったサンボーンと、かたやコーズは涼しげな表情も見せる、フレージングの対比に引き込まれます。
「Highwire」はジェフ・ローバーとの共作曲。ローバーらしいスリリングなフュージョン・アンサンブルに、コーズのクールで奔放なサックスが光ります。
「Still Got It」(ダーレン・ラーンとの共作)は、ファンキーなビート・チューン。ラーンのアレンジによる重厚なブラス・セクションを従えた、突き抜けるコーズのサックスが爽快です。近年注目されているファンク・ギター奏者コリー・ウォンが参加しています。コーズは、ツアー・バンドにウォンを起用したり、2人のコラボ・シングル『The Koz Nod』(2018)をリリースしています。
カバー演奏曲は、ビートルズの名曲「Yesterday」。R&Bシンガーのマット・クッソンが手がけたスウィート・ソウル・テイストのアレンジが秀逸です。超有名曲でも、奇をてらわないコーズのサックス演奏は魅力満点。
ボーナス・トラックとして収録された「It's All Love」は、ポップスの王道といえるロマンチックな佳曲。スムーズジャズ界の売れっ子プロデューサー/キーボード奏者クリス・デイヴィスが作曲/プロデュースした曲。最近リリースされたデイヴィス自身のソロ・アルバム『Focus』にも入っていたトラックの再収録です。
洗練された楽曲の数々は、上質なインストゥルメンタル・ポップス・アルバムとして。キレのいい演奏は、一級のコンテンポラリー・ジャズ・アルバムとして。コーズの貫禄が遺憾なく発揮された、新たな代表作です。
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