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2021年5月の3件の記事

2021年5月30日 (日)

Randal Clark 「Imaginary World」(2021)

ランダル・クラークは、米国ユタ州ソルト・レイク・シティを拠点に活動するサックス奏者。

ジェラルド・アルブライトやエリック・ダリウスらと共演するジャズ演奏だけでなく、ユタ交響楽団で活躍するなどクラシックの演奏家でもあります。また、ユタ大学で音楽教育の博士号を取得した指導者という、才能あふれる音楽家です。

この作品が、コンテンポラリー・ジャズのデビュー・アルバムのようですが、披露するサックスは技巧と熱量を込めた演奏が光る秀作です。

サポートするのは、ジミー・ハスリップ(ベース、共同プロデュース)、ジェフ・ローバー(キーボード)、ゲーリー・ノバック(ドラムス)、ヴィニー・カウリタ(ドラムス)らで、<ジェフ・ローバー・フュージョン(JLF)>の中核メンバー。

まるで、新たにクラークが加入してパワーアップしたような、JLFならではのとがったグルーヴが随所で展開されます。加えて、フィーチャー・ゲストに、ランディ・ブレッカー(トランペット)、マイケル・トンプソン(ギター)、スコット・キンゼイ(キーボード)らが参加しています。

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2021年5月16日 (日)

“魔法”をレコーディングした名プロデューサーの生涯:『The Ballad of Tommy LiPuma』 by Ben Sidran (2020)

本書は、グラミー賞受賞5回を数える名プロデューサー、トミー・リピューマ(1936-2017)の人生と功績を振り返る評伝です。著者は、ジャズ・シンガー/ソング・ライター/プロデューサーのベン・シドラン。シドランは、自身の自伝やジャズ評論などの著作を残している文筆家でもあります。

シドランいわく、リピューマはとても良くしゃべる人だったようで、彼から聞いたはなしをまとめたそうです。シドランの筆致は簡潔で読みやすく(ただしスラングが多いです)、リピューマ自身のユーモアたっぷりの語りを聞いているようで、親密な距離感を感じる良書です。

リピューマとアーティストとの交流や、名作にまつわるストーリーは、音楽ファンにとって必読の内容です。ジョージ・ベンソン、マイケル・フランクス、ドクター・ジョン、マイルス・デイヴィス、ナタリー・コール、ダイアナ・クラール、レオン・ラッセル、ポール・マッカートニー等々といったトップ・アーティストや、盟友のエンジニア、アル・シュミット(本年4月逝去)に、レコード業界の重鎮が続々と登場して、逸話の数々が活き活きと語られます。

一方で、本書はもっと骨太い分脈にこそ読む価値があります。リピューマの人生談は、幼少期から晩年にいたるまで、映画のようにドラマチックな展開です。アメリカのレコード業界の黄金時代からの興亡は、中心人物であったリピューマの証言は貴重な内容です。

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2021年5月 9日 (日)

Richard Elliot 「Authentic Life」(2021)

スコットランド出身のリチャード・エリオットは、80年代からジャズ/スムーズジャズ界の第一線で活躍するサックス奏者です。ファンク・バンドのタワー・オブ・パワーに参加した後、1984年に『Trolltown』でソロ・デビューしました。以来、20作近いアルバムをリリースしています。この新作は、『Summer Madness』(2016)以来の5年ぶりとなるオリジナル作品です。

近年作品では、『Summer Madness』がリック・ブラウン、『Lip Service』(2014)がポール・ブラウン、『In The Zone』(2011)はジェフ・ローバーらにプロデュースを任せていました。この新作は初期の作品に戻ったように、久しぶりの自身によるプロデュース作品になっています。プロデュースの熱意も込められて、コンテンポラリー・ジャズの本格派を志向した力作になりました。近年ではベスト級の作品といえます。

多くのプロジェクトで共演を重ねてきた盟友達、リック・ブラウン、ジェフ・ローバー、フィリップ・セス、デイヴ・コーズらを客演や共作に迎えています。リック・ブラウンはほぼ全曲の共作と客演に関わっています。特にブラウンが手がけたホーン・アレンジが洗練されていて、アルバム全体のサウンドのかなめになっています。

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