Craig Sharmat & Neil Andersson 「Strings」(2021)
今作は、ふたりのギター奏者、クレイグ・シャーマットとニール・アンダーソン(もしくはアンデション)が、ストリングスをバックに共演したイージー・リスニング・ムードの素晴らしい作品です。
クレイグ・シャーマットは、ソロ名義で4枚のスムーズジャズ・アルバムを発表しています。同時に、作曲・編曲家/プロデューサーとして、映画、TV番組、アニメーションなどの映像作品でも活躍する音楽家です。
ニール・アンダーソンは、60年代のロック・バンド<ファビュラス・ウェイラーズ(The Fabulous Wailers)>の在籍からプロのキャリアをスタートしています。一方で、ファインアートの画家としての道を歩み、多くの受賞歴を有している美術アーティストでもあります。
1993年に、ジプシー・ジャズ・バンド<パール・ジャンゴ>の結成メンバーとなり、20年間におよぶレコーディングや演奏活動に参加しました。現在アンダーソンは「名誉メンバー」となりバンドの活動には参加していないようですが、<パールジャンゴ>は現在も活動中(5人組)で15枚目となる最新アルバム『Simplicity』(2020)をリリースしています。
ジャンゴ・ラインハルトの伝統的スタイルと音楽を継承する、いわゆるジプシー(またはマヌーシュ)ジャズのギター奏者として、アンダーソンは”レジェンド”というべき名手でしょう。
シャーマットもソロ活動に加えて、ジプシー・ジャズ・バンド<イディオマティックス(The Idiomatiques)>を率いて活動しています。そのバンドは4人組で、ジャンゴ・ラインハルトが率いたフランス・ホット・クラブ五重奏団を彷彿とする、ジプシー・スイングのバンドです。最新作は『Out On The Town』(2018)で2作目のアルバムになります。今作のほとんどの曲でウッド・ベースを演奏しているキム・コリンズは同バンドのメンバーです。
ふたりは、音楽性の共通点から今回の共演につながったようです。
選曲は「ペルフィディア」「ムード・インディゴ」「バードランドの子守唄」「ボディ・アンド・ソウル」といった30年〜60年代のスタンダード曲を中心に、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』挿入曲の「過去と現在」(エンリオ・モリコーネ)も取り上げた、名曲揃いのカバー演奏集です。
シャーマットに手によるストリングス(フルートも入る)編曲は、映像作品での手腕が発揮されて、映画音楽と見まがう至福なムードにあふれています。
おそらく、左寄りの位置のギターがアンダーソンで、右側のやや硬い音質のギターがシャーマットでしょう。ふたりとも共通してラインハルトをフォローする奏法で、鏡のように共鳴しあうアンサンブルは心地のよい音楽世界です。
なかでも、スローな「That's All」(ナット・キング・コールの名唄が有名)や、踊るようなスイング・リズムの「君住む街角(On the Street Where You Live)」(ミュージカル『マイ・フェア・レディ』から)は、ふたりのコール・アンド・レスポンスが際立ち、特にアンダーソンのフレージングは細部に熟練の味を感じる好演です。
ちなみに、ジャケットのアート・ペインティングはアンダーソンの作品です。
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コメント
アサイユージ さん 初めまして
「Strings」をBGMにしながら初めてコメントさせていただきます。
評の通り、初めて聴くのに懐かしい映画音楽が綺麗な演奏で流れています。
コメントを書こう書こうと思いながら、今日に至ってしまいました。
こちらのサイトを参考に音楽を聴くのは、Amazon musicが始まった頃、2015年ごろからではないかと思います。
Kindle本も初版を読ませていただきました(Version8に今日気がつきました)
このサイトで初めて知ったアーチストも多く、Amazon musicのライブラリはそれらのアーチストでいっぱいです。
これからも上質なスムーズジャズをご紹介ください。
よろしくお願いします。
MOH
投稿: MOH | 2021年7月16日 (金) 17時06分
MOHさん、
コメントをどうもありがとうございます。
私のキンドル本も読んでいただき御礼です。
引き続き読んでいただけると嬉しいです!
投稿: UGASAI | 2021年7月17日 (土) 10時57分