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2022年2月26日 (土)

Ilya Serov 「Just Friends」(2021)

イリヤ・セーロフは、ロシア出身のトランペット奏者でボーカルもこなす気鋭のアーティストです。

ホームページで紹介されている経歴によると、サンクトペテルブルクでクラシックのトランペット奏者として活動のあと、21歳で米国に渡りジャズ・ミュージシャンとして活躍しています。デイヴ・コーズのツアーに参加するなど、ロサンゼルスを拠点に活動しているようです。

ソロ・アルバムは『September in the Rain』 (2013)『Back in Time』 (2018)を発表、本作が3枚目となる新作です。前2作は40年代や50年代中心のスタンダード名曲をカバーした選曲で、ビング・クロスビーやフランク・シナトラを彷彿とするスタイルのボーカルをほぼ全曲で披露した作品でした。

今作はチェット・ベイカーをテーマに、ベイカーが50年代中期に歌った名曲5曲「Just Friends」や「Time After Time」「Everything Happens to Me」などをカバーしています。ベイカーをお手本にしたような、すこし脱力系のソフトな歌声でボーカリストとしての魅力が増しています。サウンドもコンテンポラリーなアレンジを施して、洗練されたムードが漂います。

参加ミュージシャンは、デイヴ・コーズ(サックス) グレッグ・マニング (ピアノ) アレックス・ハーン(サックス) マット・キューソン(コーラス) ケイタ・マツモト(ギター)といった面々です。

ボーカル曲に加えて、オリジナルのインスト4曲も都会的なサウンドの素晴らしいテイクです。「Heat」は、デイヴ・コーズが客演したオン・ビートのキャッチーなハイライト曲。同曲ビデオに登場するセーロフが演奏しているユニークな形状の管楽器に注目。フリューゲルホルンをベースにサックスの形状を施した“Jazzohorn” と名付けた楽器で、トランペットのメーカー(英国のテイラー・トランペット社)と共同開発したオリジナル楽器なのだとか。

「Ironic」と「Chillin'」もオリジナル曲で、クールでヒップなムードのある佳曲です。セーロフと日本人ギター奏者マツモト氏との共作曲。

「My Funny Valentine」は、チェット・ベイカーもレパートリーにしていた曲ですが、セーロフは歌わずにトランペットの演奏でインスト・カバーしています。ラウンジ・ジャズ風な編曲が秀逸で、セーロフのミュート・トランペットはベイカーの渇いた音色を思わせる好演です。

以前の作品はスイング時代をテーマにした選曲やサウンドとボーカルが主体でしたが、今作でのオリジナル楽曲とコンテンポラリーなサウンドは新鮮です。今後の活躍を期待したい注目のアーティストです。

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