Freddie Fox 「Limitless」(2020)
テネシー州出身のギター奏者フレディ・フォックスは、1980年代後半にサックス奏者ウォルター・ビーズリーのアルバム参加を始まりとして主にサイド・マンとして活躍しています。ナジーやマリオン・メドウズ、シンディ・ブラッドリー、ティム・ボウマン、ランディ・スコット、リン・ラウントゥリーなど多くのアーティストのクレジットに登場するスムーズジャズの世界に欠かせないギター奏者です。
ソロ・アルバムは『Freddie Fox』(2003)『Feeling' It』(2009)をリリースして、10年ぶりの本作が3枚目になります。
奥さまは、80年前後のディスコ全盛期に活躍した歌手のイヴリン・"シャンペン”・キングです。イヴリンは、「Shame」(1977)や「Love Come Down」(1982)などダンス・チャートでヒット曲を放ったディーバでした。2007年には12年ぶりとなるアルバム『Open Book』をリリース。フォックスが演奏や曲共作でサポートしていました。
さてフォックスの本作ですが、共作を含むオリジナル曲を中心にした11曲から成っています。サポート陣は、ボビー・ウェルス(キーボード)マイケル・ブローニング(キーボード)ブランドン・レーン(ベース)らを中心に、アレックス・アル(ベース)マイケル・ホワイト(ドラムス)らがリズムを固めています。奥さまのイヴリンもコーラスやリード・ボーカルで参加しています。サックス奏者マリオン・メドウズも「Sunshine」でソロ演奏を披露しています。
多彩なポップス・アルバムのように、ソフィスティケートなサウンドで貫かれたアダルト・オリエンテッドな作品。フォックスのギターは過度な主張の無い、自然体の心地いい演奏を聴かせてくれます。
ブラス・セクションを配した「Top It Off」(ボビー・ウェルス作)や、イヴリンが歌う「Lets Dance」は、キャッチーなダンス・チューン。ダンス・ビートでも、フォックスのギターの爽やか系の音色とフレージングが印象に残ります。「Too Tuff」や「6 Point 8」の演奏は、流麗なパッセージにブルージーな表情を見せるこの人の特色を発揮した好演です。
「Al Miss U ( Tribute To Al Jarreau)」は、”アル・ジャロウに捧ぐ”と題されたゴスペル色のあるR&B曲。イヴリンに加えてケヴィン・ウェイラムがコーラスで参加しています。ちなみに、フォックスはかつて、アル・ジャロウがジョージ・ベンソンとコラボしたアルバム『Givin' It Up』(2006)で、2曲(「Mornin'」「Ordinary People」)でリズム・ギターを担当していました。
「Sweet Kisses」と「Passion」ではアコースティック・ギターを演奏しています。いずれもロマンチックな曲想を表現するように、チャーミングな演奏に引きつけられます。
ラストの曲「You Have The Touch」は、イヴリンのボーカルをフィーチャーしたバラードです。イヴリンが主役ですが、ロング・トーンを多用したフォックスのギターがドラマチックに盛り上げる佳曲です。
次は10年も待たずに新しい作品をリリースしてくれるのを期待します。
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