Daryl Beebe 「Better Together」(2021)
デトロイト出身のサックス奏者ダリル・ビービの本作は、躍動感あふれる痛快な作品。
ビービの録音作品のスタートは、幼なじみだというサックス奏者ハリー・パットン(Harry Patton)と組んだゴスペル・ユニット<パートナーズ・イン・クライスト(Partners in Christ)>でした。アルバムは「The Covenant Project」(2006)と「Called」(2010)の2作品を発表しています。
その後、ソロとしてアルバム「The Daryl Beebe Project: Seasons Change」(2018)を発表。本作がソロ・アルバムの2作目になります。
サックスのスタイルはパワー・ブロウが特徴で、ソウルフルでエネルギッシュな演奏です。
キャッチーな「Road Trip」はヒット性充分のハイライト・チューン。グルーヴィーに飛び跳ねるテナー・サックスに思わず引き込まれます。かたやソプラノ・サックスでムードを盛り上げるのがミディアム・バラードの「Uninhibited」。
「Breathe」はメロウなソウル・チューンで、艶のある奏音でドライブするフレージングが聴きどころ。
「Unmasked」は自身のサイトでの紹介によると、コロナ禍のいまを引き合いに「マスクを着けていたらお互いを分かり合えないけれど。たとえマスクを着けていても微笑みの眼差しを忘れずに。」とメッセージを込めた曲。リズム・セクションのソリッドなビートをまとってスイングするサックスの疾走感がすばらしい好演です。
全11曲は、カバーが2曲と9曲のオリジナル曲(オリジナルの2曲「New Day」「Blue Skies」は前作と同じトラックの再収録のようです)。カバー演奏は、ザ・ステイプル・シンガーズの代表曲「I'll Take You There」(1972)と、レアな選曲の「Zip Code」。
「Zip Code」は、かつてプリンスのバンドのサックス奏者だったエディ・M(ミニンフィールド)がリリースした「Eddie M」(2001)に入っている曲です。作曲はアース・ウィンド&ファイアーのドラムス奏者ジョン・パリス。エディ・Mのアルバムは廃盤のようですが、この曲はYouTubeで聴くことができました。
本作の演奏パーソネルは不明ですが、プロデュースを務めるのはマーク・”ポロ”・ディクソンという人。曲の共作や演奏にも加わった今作のキー・パーソンのようです。ディクソンは、R&B/ゴスペルの女性歌手ヴィッキー・ウィナンスの作品で演奏や曲を提供した実績があります。
情熱的なR&Bサウンドと、パワフルなビービのサックスが聴き逃せない秀作です。
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