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2022年8月 7日 (日)

Chris Standring 「Simple Things」(2022)

クリス・スタンドリングの本作は、ジャズ・スタンダード中心のカバー曲集『Wonderful World』(2021)をはさんで、オリジナル曲集としては『Real Life』(2020)に続く新作です。

CDライナー・ノーツによると、昨年スタンドリングは胸痛におそわれて救急入院、幸運にも大事には至らなかった経験をしたそうです。思いを新たにしたのは、人生のささいなこと(simple things)への感謝でした。そんな体験を背景にした本作のテーマは、「喜び、前向き、希望、すこし哀愁のある美しいメロディ、そしてソウル」と記しています。

今回は華美なアレンジは控えめで、タイトなリズム・セクションを従えたシンプルなアレンジにつとめているようです。スタンドリングのギターはいつものクールな表情に加えて、ハートフルな味わいが増したパッセージを聴かせてくれます。

ほとんどの曲のサポートは常連のふたり、クリス・コールマン(ドラム)とアンド・レベリー(ベース)が安定感のあるリズム・セクションを務めています。数曲で、ロドニー・リー(オルガン)やゲリー・ミーク(サックス)らが参加しています。

ホーム・ページでの解説によれば、プリンスとブーツィ・コリンズの影響をこめて作ったという楽曲をおさめています。

「Shadow of Doubt」は、プリンスらしいベース・ラインを取り入れたという曲。「Thank You Bootsy」は題名どおりブーツィ・コリンズへのオマージュで、十八番のボイス・エフェクターをフィーチャーしたファンキーな曲。「Face to Face」は、プリンスの名曲「Kiss」を思わせる印象的なカッティング・リフが登場する、カッコいいビート・チューン。

粘着的ではないファンクで、クールなグルーヴがスタンドリングらしい、聴き逃せない3曲です。

「Change the World」は、ダンサブルなビートとクールに響くギターのポップなハイライト曲。

「The Gist of You」は、せつなく沁みるバラード。マイナーとメジャーを行き来するメロウなパッセージが美しい曲。

「And the Show Goes On」は、本作をしめくくるにふさわしいポジティブな印象を残す佳曲。流麗なギターのフレージングはハートフルで、フェイドアウトするのが口おしい好演です。

本作にこめたテーマが雄弁に伝わる佳曲が並んで、リピートするほどに愛着がわく秀作です。

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