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2023年12月27日 (水)

Nils Wülker 「Rays of Winter Sun」(2023)

ドイツのトランペット奏者ニルス・ヴュルカーの新作はEPサイズのアルバム(デジタル配信のみのようです)で、冬をテーマにしたオリジナル4曲と2曲のクリスマス定番曲のカバーが収められています。

ピアノ奏者ティム・アルホフ(Tim Allhof)とベース奏者スヴェン・ファーラー(Sven Faller)を従えて、アコースティックでリリカルなアンサンブルを展開しています。ヴュルカーは半数の曲でフリューゲルホルンを演奏して、暖かみをしのばせた柔和な奏音が心に沁みます。

インタープレイは平穏な空気を漂わせて、曲名のイメージを描写するかのようです。「Rays of Winter Sun」(アルホフとのデュオ)や「First Sight of Snow」(トリオ演奏)は、雪や冬景色が広がり幸福感がわきあがる抒情的な好演です。

ジャズ・スタンダードの「A Child Is Born」で始まり、ドイツ讃美歌の「Macht hoch die Tür」でしめくくる構成は、おだやかなクリスマス・ムードを引き立てます。

ところで、「A Child Is Born」は数多のアーティストにカバーされるクリスマスの定番曲ですが、ジャズ・トランペット奏者サド・ジョーンズの作曲と知られる名曲です。初出はドラム奏者メル・ルイスとの双頭楽団のアルバム『Consummation』(1970)で、後に歌詞が付けられて歌曲としても人気のスタンダード曲になりました。

実はこの曲の作者は、オリジナル・トラックでピアノを演奏しているローランド・ハナだという「説」があります。3拍子ワルツのロマンチックな曲想は、クラシックも学んだハナのスタイルならではとも感じられます。

「A Child」はキリストのことで、歌詞(作曲家でもあるアレック・ワイルダー作)はイエス誕生の喜びを直感させる世界観といえます。

歌詞付きの名唱は、トニー・ベネットがビル・エバンスとのデュオ作品『Together Again』(1975)で歌ったバージョンにつきると個人的に思います。余談ですが、後年に発表された同曲の未発表別テイクと聴き比べると分かるのですが、オフィシャル・テイクではベネットが出だしを「soft as the dawn」と歌っているのは、正式には未発表テイクで歌っている「new as the dawn」なのです。歌詞を間違えたとはいえ、歌唱もエバンスのピアノも最高です。

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