Oli Silk 「In Real Life」(2024)
オリ・シルクの新作は、前作『6』から4年ぶりのオリジナル10曲からなるスタジオ・アルバム。
近年作で常連のマーク・ハイメス(ギター)を中心に、ベースのオレフォ・オラキュー(Orefo Orakwue)やドラムスのウェストリー・ジョセフ(Westley Joseph)らがサポートを固めた秀作。特にハイメスは全曲に参加していて要の存在です。
ゲストは、イリヤ・セーロフ(トランペット)、カール・コックス(サックス)といった新人に、ゲリー・オーナー(サックス)、キム・スコット(フルート)、マーカス・アンダーソン(サックス)といったお馴染みのベテラン勢が加わります。
2曲の歌ものにセッション・シンガーとしてのキャリアを有するふたりの女性ボーカリスト、レベッカ・ジェイド(「Looking Glass」)とシャノン・ピアソン(「In Real Life」)を迎えています。
ニューヨーク出身のジェイドはソロ作品『A Shade of Jade』が注目のひとで、デイヴ・コーズやトム・ブラクストン、ウォルター・ビーズリーなどスムーズジャズ系アーティストとの共演で活躍しています。
ピアソンは、ジョージ・デュークやジェフリー・オズボーンらと共演キャリアを持つベテラン・シンガー。シルクとの共演は、過去に『All We Need』(2010)にボーカル客演していました(「Bring Back Those Days」)。
さて本作の内容は、ファンクやブルースにアシッドなど多彩な曲が並んでいますが、比較的レイドバックしたムードが特色かもしれません。もちろんシルクの鍵盤(大半がピアノ)の持ち味といえるドライな質感が発揮されて引き込まれます。
「Dare to Dream」は、今作のベストに推したいトラック。グランド・ピアノを駆使したと思われるダイナミックな好演が聴きどころ。
「Slim City」は、ブルージーでソリッドなアンサンブルが硬派な演奏。ピアノに加えて電子鍵盤のフレージングのかっこいいこと。
「West Beach」はスウィートソウル・バラードで、しずくがきらめくようなシルクの鍵盤音が沁みわたります。洗練度たっぷりのハイメスのギターも注目ポイント。
ラストの「A Lil' Pick Me Up」は骨太ビートに揺さぶられるファンク・チューン。旋回するコックス(サックス)とシルクのインタープレイが最高です。
大半の曲は終盤で、キレのいいシルクの演奏がフェード・アウトするのがなんとも口惜しいけれど。秀作であります。
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