スターたちとの交遊録が面白すぎるスティーヴン・ビショップの自伝:『On And Off: An Autobiography』by Stephen Bishop(2022)
個人的に、デビュー作以来愛聴してやまない、シンガーソングライターのスティーヴン・ビショップが初めての自伝を書き下ろしました。
いくつかの短文をあつめた章と、少し長い文章が交互に並んでいます。短文には連番がふってあり、およそ80のコラムからなっています。それぞれのエピソードは、主題も時系列もランダムでコラージュするような構成が個性的です。
サンディエゴでの少年時代、ステップ・ファザー(継父)との確執、下積みから始まる音楽業界での経験、代表的なアルバムや曲にまつわるエピソード、曲作りの流儀など、ナイーヴな心情も交えながらユーモアを絶やさないことばで語ります。
ユニークなのが、数々のセレブについての記述です。友人として交流のあるエリック・クラプトンやフィル・コリンズにはじまり、ホイットニー・ヒューストン、マイケル・ジャクソン、ケニー・ランキン、ポール・サイモン、ジェーン・フォンダ、スティーヴ・マーティン、ドナ・サマー、ジミー・ウェッブ、ランディ・ニューマン、バート・バカラックなどなど、ひろく音楽/映画業界のおよそ40人は下らないスター級有名人が登場します。
広い交友関係に加えて、自虐ネタや突飛な失敗談などたわいのないトピックスも多く、いわく「それだけのことなんだけど」とむすびます。ユーモアにあふれた語り口は、寸劇を読むような面白さです。