カテゴリー「トランペット」の27件の記事

2022年6月 5日 (日)

Nils Wülker 「Continuum」(2022)

ドイツのトランペット奏者ニルス・ヴェルカーの新作は、ミュンヘン放送管弦楽団(Munich Radio Orchestra)との共演による作品です。主席客演指揮者パトリック・ハーン(Patrick Hahn)指揮による総勢60名のオーケストラと、リズム・セクションがパノラマをくり広げる名演集です。

オーケストラは自然界を彩るように響き、ヴェルカーの演奏(トランペット、フリューゲルフォン)は躍動する生命力を思わせます。

楽曲はヴェルカーのオリジナル楽曲10曲で、スウェーデン出身の音楽家ハンス・エーク(Hans Ek)が編曲を手がけています。 4曲は前作『GO』(2020)からの選曲、加えて新曲が6曲。新曲の2曲は、クレイグ・アームストロング(Craig Armstrong)との共作です。

スコットランド出身のアームストロングは、映画音楽からシンフォニーの作曲編曲や指揮にピアノ演奏など広範囲に活躍する音楽家です。ヴェルカーの過去作品でも共演しています。

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2022年3月13日 (日)

Rick Braun 「Rick Braun」(2022)

トランペット奏者リック・ブラウンの新作は、自身のレーベル<Brauntosoarus> からの初リリース作品です。デビュー作『Intimate Secrets』(1992)から30年目になるタイミングで、自身の名前を冠したタイトルに自信がうかがえます。

自作と共作によるオリジナル10曲は、バラエティに富んだ曲が並んで「ベスト・ヒット曲集」に匹敵する充実度。

「Turkish」はマンボの名曲「タブー」を思わせて、エキゾチックでも洗練したムードが印象的な曲。代表曲になりそうな佳曲です。

「The Color of Love」は、朗々としたフリューゲルフォルンが景色を描写するように響きます。ミディアムテンポのバラード「6th Street」はクールなミュート演奏で、こちらは摩天楼の夜景がイメージでしょうか。

サンバ風の「Back to Mallorca」は、ボーカリストさながらの”歌いっぷり”でオーラを放つ演奏。ちなみにタイトルは地中海のマヨルカ島ですが、『Can You Feel It』(2014)にずばり「Mallorca」という曲がありました。お気に入りのテーマなのでしょう。

ほかにもラテン・バラード「Amor De Mi Vida」に、70年代ソウル・ファンクに回帰した「Da Funk」にいたるまで、エンターテイナーさながらの多彩な展開です。

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2022年2月26日 (土)

Ilya Serov 「Just Friends」(2021)

イリヤ・セーロフは、ロシア出身のトランペット奏者でボーカルもこなす気鋭のアーティストです。

ホームページで紹介されている経歴によると、サンクトペテルブルクでクラシックのトランペット奏者として活動のあと、21歳で米国に渡りジャズ・ミュージシャンとして活躍しています。デイヴ・コーズのツアーに参加するなど、ロサンゼルスを拠点に活動しているようです。

ソロ・アルバムは『September in the Rain』 (2013)『Back in Time』 (2018)を発表、本作が3枚目となる新作です。前2作は40年代や50年代中心のスタンダード名曲をカバーした選曲で、ビング・クロスビーやフランク・シナトラを彷彿とするスタイルのボーカルをほぼ全曲で披露した作品でした。

今作はチェット・ベイカーをテーマに、ベイカーが50年代中期に歌った名曲5曲「Just Friends」や「Time After Time」「Everything Happens to Me」などをカバーしています。ベイカーをお手本にしたような、すこし脱力系のソフトな歌声でボーカリストとしての魅力が増しています。サウンドもコンテンポラリーなアレンジを施して、洗練されたムードが漂います。

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2021年11月28日 (日)

Till Brönner 「Christmas」(2021)

ドイツのトランペット奏者ティル・ブレナーの新作は、ピアノとベースとのトリオ演奏(デュオも数曲)によるクリスマス・アルバムです。

ピアノのフランク・カステニアー(Frank Chasteiner)とベースのクリスチャン・フォン・カペヘンクスト(Christian Von Kaphengst)は、ブレナーの多くの作品に参加しているサポートの常連です。気心の知れた関係がにじみ出るように、3人のアンサンブルは暖かいムードが伝わります。ブレナーは大半の曲でフリューゲルホーンを吹いていて、やわらかい音色が一段と幸福感を膨らませる好演になっています。

ブレナーのクリスマス・アルバムは今作が2作目です。かつての『The Christmas Album』(2007)は、フォン・カペヘンクストとの共同プロデュース作品で、カステニアーも演奏に加わっていました。その3人で再びクリスマス・アルバムを作ったというのも興味深いところです。

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2021年7月11日 (日)

Ryan Montaño 「Truth Journey」(2021)

ライアン・モンタノは、米国ニューメキシコ州アルバカーキを拠点に活躍するトランペット奏者です。デビュー・アルバム「Something Happened Tuesday」(2013)に続いて、コンスタントに新曲シングルを発表している新鋭アーティスト。

本作は、発表済みのシングル6曲を含んだ最新アルバムです。サックス奏者ダーレン・ラーンが、プロデュース/ミキシングや楽曲共作でサポートしています。

モンタノは同時に、コマーシャルや映画にも出演する俳優やファッション・モデルもこなし、クリエーターとして映像作品を制作するなど、多彩な才能を発揮するマルチ・タレントです。

音楽家としては作曲編曲に情熱を傾けていると述べているように、本作は多彩な曲想と洗練されたサウンドが際立つ会心作です。

サウンド作りは、おそらく一緒に活動するバンド・メンバーが中心で、ユージ・グルーヴ、ブライアン・ブロムバーグ、ヴァンデル・アンドリュー、フィル・デニーらトップ級のミュージシャンもゲスト参加しています。

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2020年10月 4日 (日)

Nils Wülker 「Go」(2020)

ニルス・ヴュルカーは、1977年ドイツ・ボン生まれのジャズ・トランペット奏者です。デビューから20年近いキャリアを誇り、ドイツのジャズ関連の賞をたびたび受賞するなど、ドイツのジャズ・シーンで高い評価と人気を誇るミュージシャンです。

『High Spirits』(2002)から、11枚のソロ・アルバム(うち2枚はライブ・アルバム)を発表しています。

ヴュルカーの音楽スタイルは、アシッド・ジャズやヒップ・ホップ、エレクトロニックやハウスといった要素を解釈したフューチャー系コンテンポラリー・ジャズといえます。サウンドはアヴァンギャルド志向ですが、トランペットのソフトなフレージングが魅力になっています。

この新作は、スタジオ作品としての前作品『On』(2017)と同じラルフ・メイヤー(Ralf Christian Mayer)との共同プロデュースによる制作で、連続性がある連作ともいえます。

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2020年7月11日 (土)

Charlton Singleton 「Date Night」(2020)

ランキー・タンキー(Ranky Tanky)は、アメリカ、サウスカロライナ州チャールストンを拠点に活動する5人組のバンド。「ガラ」(Gullah)と呼ばれるアメリカ南部の伝統的音楽をジャズのアンサンブルで演奏しています。

『Ranky Tanky』(2017)でアルバム・デビュー。2作目の『Good Time』が、第62回(2019)グラミー賞「ベスト・リージョナル・ルーツ・ミュージック・アルバム」を受賞しました。ジャズ・シーンで 注目のバンドです。

ランキー・タンキーのメンバーのひとり、チャールトン・シングルトンは1971年生まれのトランペット奏者。バークレー音楽大学を卒業した、アカデミックな音楽経歴を持つジャズ・ミュージシャンです。チャールストン拠点のスウィング・ジャズ・バンド「チャールストン・ジャズ・オーケストラ(CJO)」の音楽監督と指揮者を、バンド創設(2008)からおよそ10年間にわたり務めていました。

トランペット奏者としてのソロ・アルバムは、「Delicate」(2015)「Soul Cavern」(2013)「The New Deal」(2011)を発表しています。この新作が4作目です。

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2020年2月 9日 (日)

Cindy Bradley 「The Little Things」(2019)

シンディ・ブラッドリー(トランペット)の新作は、再びプロデュースにマイケル・ブルーニングを迎えた、クールな叙情が深く印象に残る作品です。ブルーニングは、ブラッドリーのデビュー作『Bloom』(2009年)から連続して3作をプロデュース。中でも、2作目の『Unscripted』(2011年)は、クラブのギグを思わせるストーリー演出と、ミュート・トランペットのクールな味わいを際立たせた傑作でした。

本作でブルーニングは、全10曲の作曲(ブラッドリーとの共作含む)と、キーボード演奏を手掛けてサウンドの全体像を創っています。ブラッドリーは、トレード・マークのミュート・トランペットに加えて、フリューゲルフォーン、サックス、トロンボーンと多様なホーン楽器を演奏。リズム・セクションは、スキニー・ハイタワー(ベース)、フレディ・フォックス(ギター)、メル・ブラウン(ベース)が中心のメンバー。ゲストに、レブロン(サックス)や、ギリシア出身のスパニッシュ・ギター兄弟デュオ、ザ・サーナス・ブラザース(Sahnas Brothers)のサノ・サーナス(Thano Sahnas)が数曲で参加しています。

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2019年9月23日 (月)

Rick Braun 「Crossroads」(2019)

リック・ブラウンの新作は、前作「Around The Horn」(17年)や「Can You Feel It」(14年)が放っていたオン・ビートな熱量は控えめ。スロウな楽曲を中心にブラウンのシルキーな音色を堪能出来る上質なサウンドの秀作だ。

全10曲(2曲はカバー曲)、フィリップ・セスとの共演が3曲、クリス・デイヴィスとの共演が2曲、ピーター・ホワイトとの共演が1曲と、いずれも過去作品でも共演している3人とのコラボレーションが聴きどころになっている。

セスと共作した「Crossroads」はポップなアレンジを施したキャッチーな曲。終盤のセスとブラウンのリラックスした掛け合いに引き込まれる。「Bahia」もセスとの共作でボッサ・ムードが心地いい佳曲。メランコリーなアレンジが印象的だ。

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2018年7月22日 (日)

Rob Zinn 「Walk The Walk」(2018)

トランペット奏者ロブ・ジンの新作は、前作のデビュー作「Yesterday Again」(2016)に続く2枚目。今作は、ポール・ブラウンが全面的にプロデュースに関わった秀作。ポール・ブラウンのスタジオ「Funky Joint」で収録されたという全10曲。

ほとんどがジン自身とブラウンの共作の曲で、都会的で洗練されたメロディーラインの連続の充実した内容。ポール・ブラウンらしい、アクのないR&Bサウンドのデザインがかっこいいし、落ち着いたバンド・サウンドが、ロブ・ジンのフレージングを際立ている。

タイトル曲のM1「Walk The Walk」と、M2「Wherever You Are」は、いずれもサックス奏者アンドリュー・ニューがゲスト参加した演奏曲。ファンキーな「Walk The Walk」も、AORのスロウ・バラードような「Wherever You Are」も、二人のスリリングなインタープレイが必聴のハイライト曲。ジンがフリューゲル・ホーンを吹く、M3「Journey of the Heart」は、ソフトな音色のフレージングが包容力を感じさせる。

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