カテゴリー「グループ」の85件の記事

2023年3月26日 (日)

The 3 Keys 「We 3 Keys」(2023)

本作は3人のキーボード奏者、ボブ・ボールドウィン、ゲイル・ジョンソン、フィル・デイヴィスによる、ザ・スリー・キーズ(The 3 Keys)と名乗るユニットの初アルバムです。

ニューヨーク出身のボールドウィンは、本サイトでも過去作を何度か紹介してきましたが、言うまでもなくスムーズジャズを代表するアーティストのひとり。

フィラデルフィア出身のジョンソンも、ジャズ・イン・ピンクの作品や近年作『Joy!』で実証済みの実力派です。

デイヴィスはアトランタ出身の音楽家で、ボニー・ジェイムスやジョージ・ハワード、アル・ジャロウ、ウォルター・ビーズリー、ノーマン・ブラウンらと共演や楽曲提供で活躍してきた人。ソロでは『Philosophy』(2008)など数作を発表しています。地元の音楽教育にも従事していて、アトランタにあるクラーク大学音楽学部の副教授を務めているようです。

3人が奏でる鍵盤楽器、ピアノからエレキピアノ(フェンダーローズ)にモーグなどのシンセサイザーが自由に交錯して、”クワイエット・ストーム”でメロウな音楽世界が展開します。白熱するようなインタープレイは飛び出しませんが、リラックスした中にもグルーヴが共鳴する秀作です。

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2023年2月26日 (日)

Jamhunters 「Climate」(2023)

Climate_coverコペンハーゲンを拠点に活動するジャムハンターズは、ピーター・ミカエル(キーボード)とラース・ファビアンセン(ギター)のふたりによる2006年にデビューしたスムーズジャズ・ユニットです。

以前当サイトで紹介した3作目の『Driftin'』(2011)は、軽快で洗練されたサウンドの秀作でした。その後、『Colortones』(2016)とスタジオ・ライブの『Nightclub』 (2017)をリリースしています。この新作は6年ぶりのオリジナル・アルバムです。

コンセプト・アルバムを意図した構成が魅力を引き立てています。「天候」をテーマにした全8曲(ミカエルとファビアンセンの共作)は、各曲の30秒前後の短いプレリュードから始まります。鳥や波音などのSEを交えたプレリュードにセンスの良さが光ります。

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2023年1月15日 (日)

Yellowjackets 「Parallel Motion」(2022)

デビュー作から活動歴は40年を越えるイエロージャケッツの新作は、通算26作目となるスタジオ・アルバムです。かつてのフュージョン・バンドから進化して久しいですが、本作はコンテンポラリー・ジャズ・バンドとして品格もまとう充実作です。本年度グラミー賞ベスト・ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム部門にノミネートされています。

現在のメンバーは、オリジナル・メンバーのラッセル・フェランテ(キーボード)を筆頭に、在団歴30年超で肩を並べるボブ・ミンツァー(サックス)、退団を経て復帰した通算20年超在籍のウィリアム・ケネディ(ドラムス)のベテラン3人に、2015年に加入したデーン・アルダーソン(ベース)の4人です。

この4人によるアルバムは、『Cohearence』(2016)を初作として、本作が4作目。2作目の『Raising Our Voice』(2018)はブラジル出身のジャズ歌手ルシアーナ・ソウザとの共演作品。続く『Jackets XL』(2020)は、ミンツァーが主席指揮者を務めていたWDRビッグバンドとの共演で、ほぼ半数が過去曲をビッグバンドのアレンジで披露した作品でした。コラボ作品が続いたので、4人だけのアンサンブルによる演奏作品としては、初作以来久しぶりになります。

今作の演奏曲は、それぞれが持ち寄ったオリジナルの新曲9曲から成ります。ケネディとアルダーソンの曲も含めた揃い踏みの構成で、さらに深まった一体感がうかがえます。

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2022年1月29日 (土)

Will Ackerman, Jeff Oster, Tom Eaton 「Brothers」(2021)

本作は、今年のグラミー賞ニューエイジ部門のベスト・アルバム賞ノミネート作品に選ばれました。

ニューエイジ・ミュージックの分野で活躍する3人、ウィル・アッカーマン(アコースティック・ギター)ジェフ・オースター(フリューゲルホルン/トランペット)トム・イートン(ピアノ/キーボード/パーカッション他)によるコラボ・アルバムです。

ウィル・アッカーマンはウィンダム・ヒル・レコードの創始者であり、1980年代にブームを起こしたニューエイジ・ミュージックの立役者です。70歳を超えた今でも現役で活動しています。

ジェフ・オースターは、アッカーマンのプロデュースで2004年に初めてのソロ・フル・アルバム『Released』をリリース。以降ソロ名義で5作品を発表しています。

トム・イートンは、ピアノ/キーボードやギター/ベース/パーカッション等も演奏するマルチ・プレイヤーであり、プロデュースやミキシング/マスタリングも手がけます。2016年からアンビエントなソロ作品を多数発表しています。アッカーマンとオースターの作品では、演奏やマスタリングで関わっています。

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2021年12月12日 (日)

Dave Koz and Cory Wong 「The Golden Hour」(2021)

デイヴ・コーズの新作は、新世代ファンクのギター奏者コリー・ウォンとの熱量あふれるコラボレーション作品です。

ウォンは、ミネアポリスを拠点に活動する気鋭のアーティストです。2016年ごろからファンクバンド、ヴォルフペック(Vulfpeck)にリズムギター奏者として参加、パーカッシブなカッティング・ストローク奏法で一躍注目されました。自身のバンドを従えたソロ活動にとどまらず、ジャンルを超えて活躍しています。

コーズとウォンは、以前から共演を重ねてきました。2018年にコラボ・シングル「Koz Nod」をリリース。ウォンのアルバム『Elevator Music for an Elevated Mood』(2020)では2曲(「Restoration」「Watercolors」)にコーズが客演しています。

ウォンも演奏に加わったヴォルフペックのライブ盤『Live at Madison Square Garden』(2020)では、コーズがマンドリン奏者クリス・シーリとゲスト参加した演奏「Smile Meditation」(2015年のデビュー・アルバム『Thrill of the Arts』の曲)が記録されています。

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2021年2月16日 (火)

Vibes Alive 「Vibrasonic」(2020)

<ヴァイブス・アライヴ>は、ヴィブラフォン奏者ダーク・リクターとギター奏者ランダル・クリスマンによるコンテンポラリージャズ・ユニットです。

クリスマンは、カリフォルニアで活躍する作曲家/ギタリストで、主にTVやコマーシャル、映像作品に関わっているようです。リクターもカリフォルニア州パサデナ出身のヴィヴラフォン奏者で、主に地元での演奏活動と、映像作品の音楽制作でクリスマンと共演する間柄のようです。

その2人が組んだユニットは過去に、『Vibes Alive』(1997)『After Hours』(2008)と2枚のアルバムをリリースしていて、この新作が3枚目となります。収められた全10曲は、2人の共作によるオリジナル楽曲です。

リズム・セクションは、ジミー・ジョンソン(ベース)、ルイス・コンテ(パーカッション)、ヴィニー・カウリタ(ドラムス)が固めています。3人は名うてのセッション・マンとして、ジャズやポップス、ロックに至る数多くのスター・ミュージシャンと共演しています。その3人が繰り出すタイトなリズムが全曲を貫いているところも聴きどころです。

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2020年9月13日 (日)

Special EFX 「All Stars」(2020)

スペシャルEFXの、『Deep As The Night』(2017)に次ぐ新作です。

スペシャルEFXは、ギター奏者キエリ・ミヌッチによるコレクティブ・プロジェクトです。メンバーが流動的に集合して音楽作品を創るのがコレクティブというスタイル。この新作は「オール・スターズ」と名付けられた通り、ミヌッチが総勢18名におよぶトップ級のミュージシャンを迎えて創り上げた作品です。

ソロをフィーチャーしたアーティストは、リン・ラウントゥリー(トランペット)、ディビッド・マン(サックス)、エリック・マリエンサル(サックス)、ネルソン・ランジェル(サックス)、ラオ・タイザー(キーボード)など、過去作品やツアーでの共演を重ねた人たちが並んでいます。また、レジーナ・カーター(バイオリン)、アントワン・シルバーマン(バイオリン)、ミノ・チネル(パーカッション)、メイザ・リーク(ボーカル)といった逸材を起用しているのが興味を引かれます。

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2020年8月 9日 (日)

Under The Lake 「Your Horizon Too」(2020)

アンダー・ザ・レイクは、キーボード奏者ジェイソン・ティップ(Jayson Tipp)が率いるコンテンポラリー・ジャズ・ユニットです。ティップがこのユニットを結成したのは28年前、1992年に遡ります。

アルバムは、『Dive In』(1993)『Up For Air』(1996)をリリースした後、活動を休止します。10年のブランクを経て再結成、『People Together』(2007)を発表します。それからまた10年後に、『Jazz, Groove & Attitude』(2018)をリリース。今回の新作は、同ユニットの作品としては5作目となります。

ティップ以外は、アルバムごとにメンバー編成が変わっています。本作のメンバーは、ジェイソン・ティップ(キーボード)、ネーサン・ブラウン(ベース)、リチャード・セラース(ドラムス)、クワンタン・ジェラルド・W(サックス)に、パトリック・ヤンダール(ギター)が加わりました。ヤンダール以外は、3作目の『People Together』と同じメンバーです。ブラウンは、2作目にも参加していました。ジェラルド・Wとヤンダールは、それぞれソロとして活躍するミュージシャンで、ソロ・アルバムも多数リリースしています。

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2020年4月25日 (土)

The Smooth Jazz Alley 「Let's Ride」(2020)

ザ・スムーズ・ジャズ・アレイは、サンフランシスコを拠点に活動する2人組のユニットです。

キーボード奏者マルコ・モントーヤ(Marco Montoya)とギター奏者スタン・エヴァンス(Stan Evans)が、2016年に第1作『Been A Long Time Comin』をリリース。その後エヴァンスと入れ替わりに、ドラム奏者ケヴィン・ルイス(Kevin Lewis)が参加しました。第2作となる本作は、モントーヤとルイスによる新生ユニットの新作です。

ゲストは、キエリ・ミヌッチ(ギター)、ジョエル・デル・ロザリオ(ギター)、アンディ・スニッツアー(サックス)、レブロン(サックス)、エリック・マリエンサル(サックス)、トニー・ゲレロ(トランペット)、ロバート・バレー(ベース)、マット・ゴーディナ(プロデュース/ギター)など、スムーズジャズ・ファンには馴染みの深い代表的なアーティストが多数参加しています。
第1作のメンバーであったスタン・エヴァンス(ギター)も半数の曲で、共作と演奏に参加しています。

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2020年4月12日 (日)

Roman Street 「Balcony of the World」(2020)

ローマン・ストリートは、トンプソン兄弟(ジョシュとノア)によるギター・デュオです。フラメンコをベースに、ラテン系の音楽、ジャズやポップスを取り込んで、ギター2本で表現する気鋭の二人組。

現代的なフラメンコ、いわゆる「ニュー・フラメンコ」の世界には、ギター2本による達人デュオが何組もいます。例えば、ララ&レイズ(Lara & Reyes)、ヤング&ロリンズ(Young & Rollins)は、両組とも2000年初頭に活躍したユニット。ストランズ&ファラ(Strunz & Farah)は、現役で活動中の二人組。いずれもアメリカ出身ユニットで、2本ギター、フラメンコのクロスオーバーという音楽スタイルは共通で、ローマン・ストリートの二人にとっての”ロール・モデル”でしょう。

先人の3組は、ギターの至芸をアピールする、まさにヴァチュオーゾの演奏が魅力ですが、ローマン・ストリートの二人はポップス寄りのソフィスティケートな音楽性が魅力です。わたしも、彼らの音楽には強く惹かれています。ポップなセンスもあり、ソフトな音像でもグルーヴを感じます。

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