カテゴリー「サックス」の149件の記事

2023年5月 5日 (金)

Pelle Fridell 「Mellow」(2023)

Mellow

スウェーデン出身のペレ・フリーデルは、デンマークのコペンハーゲンを拠点に活躍するサックス/マルチリード奏者です。キャリアは30年を越えて、ソロ・アルバムはデビュー作『Go Jaz』(2001)から7作品を数えます。

8作目となる本作は、パンデミック期間に書きためたという12のオリジナル曲がおさめられています。

フリーデルは、エネルギッシュなブローが特徴といえる奏者です。デビュー作ではアバンギャルドなフレージングで先進的な印象を残しました。近年の作品『Soul Go Jaz』(2018)は、ソウルフルな熱量が際立つ秀作でした。今作では、浮遊感を漂わせるクールな演奏を披露しています。

キーボード奏者ニコライ・ベンツウォン(Nikolaj Bentzon)をパートナーに迎えて、ほとんどデュオによる演奏が展開されます。シンセ・サウンドのレイヤーや複数のリード楽器などのオーバーダビングを施して、音空間を深める効果も作り出しています。

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2023年2月12日 (日)

Jason Jackson 「All In」(2022)

Jasonjaksonallinジェイソン・ジャクソンは、米国はフィラデルフィア郊外の都市ウィルミントン出身の新鋭サックス奏者です。公表されている略歴によると、米国海軍の所属ミュージシャンとして演奏活動に従事して、のちに横須賀をベースとする第七艦隊の軍楽隊(フリート・バンド)に所属しました。横須賀には3年間在住していたそうです。退役後はソロ活動を初めて、ギター奏者アダム・ホーリーのプロデュースでデビュー作『Movin’ On』(2021)をリリースしています。

ダンサブルなビートに乗せて、エネルギッシュにブローするスタイルが持ち味です。キャッチーなリフを強調するフレージングで、スムーズジャズ系直球のサウンドを聴かせてくれます。

ソロ第2作となる本作も、アダム・ホーリーがプロデュースを務めています。楽曲は、ジャクソンとホーリーの共作によるオリジナル曲が中心です。ゲストには、スムーズジャズ界のトップ級アーティストを曲ごとに並べた構成はホーリーの手腕でしょう。ジノ・ロザリア(ピアノ)キエリ・ミヌッチ(ギター)エリック・マリエンサル(サックス)ジョナサン・フリッツェン(ピアノ)らがフィーチャーされてソロを披露しますが、負けじと対するジャクソンの熱い吹奏に引きつけられます。

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2023年1月 4日 (水)

Valentino Maltos 「Analog Future」(2022)

Analogfuture_ヴァレンティノ・マルトスはテキサスを拠点に活動するサックス奏者です。ファミリー・バンドの一員としてとして10代初めからステージに立ち、スタジオ・ミュージシャンとしては20年のキャリアを誇るといいます。

本作は、マルトスの第1作となるスタジオ・アルバムです。共作を含めた自身のオリジナル楽曲を中心に、スティーヴィー・ワンダーの「Don't You Worry 'bout A Thing」のカバーも含めた11曲が並んでいます。

ジャズ/R&B/ヒップホップなどクロスオーバーなサウンドに、エネルギッシュに吹き回るマルトスのサックスが痛快な秀作です。ショート・ノートを畳みかけて、グルーヴの熱量もあふれるスタイルが個性的です。サポート陣は、マルトス馴染みのテキサス・サンアントニオ周辺で活躍するミュージシャンが中心のようです。

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2022年11月27日 (日)

Kim Waters 「That Special Touch」(2022)

サックス奏者キム・ウォータズは、20作を超えるソロ・アルバムに加えて、メンバーとして参加した「ザ・サックス・パック」やプロデュースを務める「ストリートワイズ(Streetwise)」シリーズなどの作品もあり、まとめると40近い作品数を誇ります。それでも、新作のたびに聴き惚れてしまうアーティストです。

ソロ25作目となる今回の新作も、アルバムを通して鉄板の安定感を発揮した秀作です。出だしのグルーヴからつかまれて、しばらくの間はローテーションで聴きこむパターンにまたもハマりました。

1曲目の「Joy Dance」のメロウなリズムとメロディに、いつもの安心感がふくらみます。「That Special Touch」は、流れるようなソプラノのフレージングにもソウルな表情を見せるのはこの人ならでは。

「Pathway to Love」のスウィート・メロディ、「House Call」のファンキーなビート、「Get Ur Groove On」はレトロなダンス・ナンバー、「Breathless」はフラメンコ・スタイルのギターが印象的、という具合に多彩な作曲の力量にもあらためてうなります。

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2022年11月13日 (日)

Boney James 「Detour」(2022)

ボニー・ジェイムスの新作は、前作『Solid』(2020)の進化形を思わせて、ダウンテンポやアンビエント的な静的アプローチのサウンドに、艶とグルーヴを失わないジェイムスのサックスが際立つ秀作です。

サウンドを作り上げているのは新鋭のアーティストとのコラボです。

最近作では度々共演しているジャイラス・モジー(Darius Mozee)や、前作に参加していたビーツ・メイド・バイ・フレッシュ(BeatsMadebyFresh)と、新たにアニカン&ヴェイダー(Anikan & Vader もしくはANKN & VDR)やビッグス&バングス(Bigs & Bangs)らが、曲共作や共同プロデュースに関わっています。

ビーツ・メイド・バイ・フレッシュと名乗るクリスチャン・フレイザー(Christian Frazier)は、ロサンゼルスを拠点に活動するプロデューサー/音楽家。R&B/ラップ/ヒップ・ホップ系のアーティスト、ギャレン(Garren)、マット・マルチネス(Matte Martinez)、スティーヴン・G(Steven G)などのプロデュースを手掛けています。ソロ名義の『Liquid Relaxation』(2021)もリリースしています。

アニカン&ヴェイダーは、ワシントンDCを拠点に活動する演奏家ユニット。ビヨンセと共作の実績もある作曲家/シンガーのディクソン(Dixson)や、ネオソウル系シンガー/作曲家のエリック・ロバーソン(Eric Roberson)らのプロデュース/共演で注目されています。自己名義の『Chocolate City Soul(Vol.1 & 2)』をリリースしています。

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2022年9月11日 (日)

Eric Darius 「Unleashed」(2022)

エリック・ダリウスは、オーラを放つボーカリストさながらに表現豊かに”歌う”サックス奏者です。ビートに乗るエネルギッシュなシャウトから、バラードではソウルフルで雄弁な吹奏に魅了されます。

前作『Breakin' Thru』(2018)は、自身のプライベート・レーベルからの初めての作品でした。それから4年ぶりの2作目、通算8作目となる新作は、過去作品をしのぐ個性を発揮したベスト級のアルバムです。

今作のプロデュースは、フィリップ・ラシター(Philip Lassiter)が務めています。

米国アラバマ州出身のトランペット奏者ラシターは、マルチ演奏家/作編曲家/プロデューサーとして活躍する気鋭のアーティストです。プリンスのホーン・セクションへの参加から、アリアナ・グランデ、カーク・フランキン、ジル・スコット、アル・ジャロウ、など多くのメジャー・アーティストと共演しています。自身のソロ・アルバムや、リーダーとして率いるファンク・バンドのフィルシー(Philthy)名義の作品も発表しています。ソロ名義の最新作は『Live In Love』(2021)です。

さて本作は、ほぼ全曲をダリウスとラシターが共作。ホーン・セクションを配したビートフルな曲から、ヒップホップやR&B/ファンクなど多彩な楽曲が並んでいます。

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2022年7月31日 (日)

Mike Phillips 「Mike Phillips」(2022)

マイク・フィリップスは、ニューヨーク州マウントバーノン出身のサックス奏者です。10代後半からプロ活動を始めて、およそ25年超のキャリアを誇る演奏家です。

アメリカのプロ・フットボール・リーグNFLで行われる試合前の国歌斉唱セレモニーでは、何度となく独奏を披露していることから、スポーツ・ファンにも広く知られている”サックス・マン”です。(YouTubeでビデオが見られます。)

サイド・マンとして、ジル・スコット、ブーツィー・コリンズ、プリンス、スティーヴィー・ワンダー、マイケル・ジャクソン、らとの共演で実績を残しています。

マイケル・ジャクソンの「Behind The Mask」(2010年『Michael』所収)や、スティーヴィー・ワンダーの「True Love」(2005年『A Time 2 Love』所収)で聴けるサックスは、フィリップスの演奏です。

ソロとしては、デビュー作『You Reached Mike Phillips』(2002)から『Pulling Off The Covers』(2020)まで4枚のアルバムを発表しています。本作が5枚目となるオリジナル最新作です。

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2022年6月19日 (日)

Najee 「Savoir Faire」(2022)

サックス奏者ナジーの新作は、ジャケットで着こなす色あざやかなシャツように、多彩な聴きどころが満載の充実作品です。

ベテランから新鋭まで多様なアーティストとのコラボレーションやセッション、オリジナルからカバー曲にいたるバラエティな選曲、ソフィスティケートで洗練されたサウンド、隅々まで魅力的な内容です。

「Dr.Dolittle」は、70年代後半から活躍しているジャズ・ピアニストのフランク・ウィルキンスを迎えた、ウィルキンスのオリジナル曲の演奏です。ナジーのリリカルなソプラノが主役ですが、ウィルキンスのファンキーなピアノ・ソロも光っています。

「Valentine Love」は、70年代に活躍したベース奏者マイケル・ヘンダーソン作の名曲(オリジナルはヘンダーソンとジャン・カーンのデュエット)。ソウルフルなボーカルは、80年代に活躍した女性R&B歌手のアリソン・ウィリアムズ。ナジーの、シルキーでも艶のあるソプラノ演奏が絶品です。

「Bottom to the Top」は、多くのセッションで活躍するベース奏者デヴィッド・ダイソンのオリジナル曲。ナジーは中盤からテナーに替えてフルートを演奏しています。ダイソンのダイナミックなチョッパーに目が覚めます。

新鋭キーボード奏者マーク・ハリスIIとのコラボは、ハリスのオリジナル曲「Luna」。闊達にはねまわる個性的なハリスのピアノと、おおらなナジーのフルートがからんだ痛快なインタープレイです。

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2022年5月15日 (日)

Zolbert 「Focus」(2022)

ゾルバート(本名アルベルト・ゾルタン Albert Zoltán) は、ハンガリーで活躍するサックス奏者です。

2013年ごろから、ジャズ・コンテストの受賞や多くの演奏パフォーマンスでハンガリーのジャズシーンで注目を集めたようです。

レコーディング作品は、デビュー作『One』(2015)と『Inside Out』(2017)の2枚のスタジオ・アルバムに、ライブ演奏集『Live』(2018)を発表しています。

スタジオ・アルバムの制作では、同じくハンガリーのスムーズジャズ・ユニット、ピート・プロジェクトのリーダーであるピーター(ピート)・フェレンツ(Péter Ferencz)がプロデュース、演奏、楽曲共作で強力なサポートを務めています。

今回の新作も、フェレンツを筆頭に、ハンガリーのミュージシャンを布陣にして制作されました。

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2022年5月 5日 (木)

Darren Rahn 「Rock The World」(2022)

サックス奏者ダレン・ラーンの本作は、デビュー作『Soulful』(2004)から数えて7枚目となる新作です。

6枚目の前作『Hymns from the Heart』(2018)は、伝統的な賛美歌やゴスペル曲を、セルフ・ダビングによるピアノとのデュエットで演奏した作品。イースター(復活祭)を祝して制作したというスピリチュアルな企画作品で、ヒーリング・ムードにひたれる秀作です。

そして今作は、路線的には5枚目の『Sonic Boom』(2016)以来久しぶりのエネルギッシュなサックス演奏とサウンドが聴ける作品です。キャッチーなオリジナル曲も佳作揃いで、隙のない力作です。

サポートでは常連のふたりメル・ブラウン(ベース)とタレル・マーティン(ドラムス)に加えて、アダム・ホーリー(ギター)ポール・ジャクソン・ジュニア(ギター)アレン・ハインズ(ギター)らが演奏を固めています。フィーチャー・ゲストに、デイヴ・コーズ(サックス)ブライアン・ブロムバーグ(ベース)ブライアン・カルバートソン(ピアノ)らも参加しています。

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