カテゴリー「コラム」の38件の記事

2021年12月30日 (木)

2021年のベスト3+1

今年紹介した作品の中から選んだ、個人的なベスト作品です。

 

 

  1. Dave Koz and Cory Wong 『The Golden Hour
  2. Tony Saunders 『All About Love
  3. JJ Sansaverino 『Cocktails & Jazz

次点 Gary Honor 『Momentum

 

世界のコロナ流行がおさまらない状況でも、多くのアーティストがリモートやワンマン演奏を駆使して作品を制作しました。

デイヴ・コーズとコリー・ウォンのコラボ作品は、貴重といえるスタジオ・ライブの熱量が沸く傑作。ウォンが指揮するサウンド・プロダクションと、コーズの弾けるサックスが有機的に共鳴した名演奏です。

いまやスムーズジャズのベース奏者は多士済々の趣きですが、トニー・サンダースはベース演奏はもとよりサウンド・プロデュースの才能に注目したいアーティストです。本作は、フロント楽器としてのベース演奏が躍動して、サウンド全体のグルーヴが発揮された充実作です。

JJサンサヴェリーノの作品は、緻密な編曲とトップ級のミュージシャンを集めて制作した才能の集積といえる作品です。バー・カクテルのコレクションをテーマにしたコンセプトも秀逸です。

ゲリー・オーナーの久しぶりの作品はリモートで制作されたようですが、グルーヴのドライブ感がリアルに迫る力作です。オーナーのパワフルなサックス演奏はテンションが上がります。

 

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2021年12月29日 (水)

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ②

前記事に続いて、残りの2作品を紹介します。

4. Randy Brecker & Eric Marienthal『Double Dealin'』

ランディ・ブレッカー(トランペット/フリューゲルホルン)とエリック・マリエンサル(サックス)の、初めてのコラボ作品。プロデュースはジョージ・ウィッティ (キーボード)で、作曲/共作からバック・サウンドまで手掛けて本作の要になっています。数曲に、ジョン・パティトゥッチ(ベース)とデイヴ・ウェックル (ドラム)が参加しています。

マリエンサルは、チック・コリア・エレクトリック・バンドのメンバーとして80年代後半にキャリアをスタートしましたが、その時のバンド・メイトがパティトゥッチとウェックルでした。かたやウィッティは、ブレッカー・ブラザースのサポート・メンバーでした。70・80年代のフュージョン・シーンを盛り上げた顔ぶれが集まりました。

「Double Dealing'」は、ワウワウ・エフェクトのブレッカーとパワフルなマリエンサルが激突するベスト・トラック。
「Fast Lane」は、パティトゥッチとウェックルが固める鋭利なリズム・セクションと、ふたりの吹奏も尖ったインター・プレイが圧巻です。
「You Ga (Ta Give It)」は、ブレッカー・ブラザースの『Detente』(1980)に入っていた曲。ディスコ・ビート的なグルーヴに乗って、ふたりが交わすファンキーなバトルが聴きどころ。

現在進行形のスリリングなフュージョンが躍動する名演奏の作品です。

 

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2021年12月26日 (日)

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ①

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門賞のノミネート5作品が選ばれました。下記に3作品を紹介します。残りの2作品は、後日紹介します。

受賞作は、2022年1月31日(アメリカ時間)に発表される予定です。

1. Rachel Eckroth『The Garden』

レイチェル・エックロスは、シンガー・ソング・ライターとしてクロス・ジャンルなソロ作品を発表しているアーティスト。ジャズにもアプローチしたのが近作『The Blackbird Sessions Vol.1』で、ご主人のベース奏者ティム・ルフェーヴル (Tim Lefebvre)とのデュオでジャズのスタンダードを歌っています。

本作は、おそらく初めてのインスト・アルバム(1曲はボーカル入り)で、全曲でキーボード演奏を披露した意欲作です。

共演するアンサンブルは、ルフェーヴルに加えて、サックス奏者ダニー・マッキャスリン(Donny McCaslin)、ギター奏者ニア・フェルダー(Nir Felder)、ドラム奏者クリスチャン・ユーマン(Christian Euman)ら、いずれも気鋭のジャズ・ミュージシャンです。

「Vines」は、4ビートのビーバップからフリーにへ展開するジャズ演奏。エックロスのエレピ演奏が聴きどころです。「The Garden」は、スリリングなインタープレイと達者なアコピが交差する個性的な佳曲。「Oil」は、プログレッシブ・ロックのようで未知の自然界をイメージさせる独特の音楽世界です。

アバンギャルドな音像と伝統的なジャズも融合して、物語性に引き込まれる魅力的な作品です。

 

 

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2021年2月21日 (日)

あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 5)

1. カラパナ:「(For You)I'd chase a rainbow」(1976)

日本でも人気が高かったハワイのバンド、<カラパナ>のセカンド・アルバム収録曲です。

サックス演奏は、マイケル・パウロ(Michael Paulo)。イントロと間奏のドリーミーなフレージングが爽やかな珠玉のバラード曲です。

パウロは、セカンド・アルバムから<カラパナ>に参加したメンバーです。同じアルバムに収録されたインスト曲「Black Sand」は、パウロのエネルギッシュな吹奏が聴ける代表曲。加速してゆくスピード感のピークで登場するパウロのサックスのかっこよさは絶品です。

パウロは1979年ごろに正式メンバーを外れたようですが、2000年代の再結成にも合流しました。再結成後のスタジオ・アルバム『Blue Album』(2002)にも参加しています。最新のソロ・アルバムは、『Beautiful Day』(2018)です。

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2021年1月 9日 (土)

あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 4)

1. スティーリー・ダン:「FM(No Static at All)」(1978)

間奏と終盤に入るテナー・サックスは、ジャズ・サックス奏者のピート・クリストリーブ(Pete Christlieb)です。ゾクっとするジャジーなサックスが、ミステリアスな曲想を盛り上げています。終盤のアドリブのフレージングは名演です。

映画『FM』(1978)のテーマ曲としてリリースされてヒットしましたが、スティーリー・ダンのオリジナル・アルバムには未収録の人気曲です。

アルバム『Aja』の中の 「Deacon Blues」でも、クリストリーブがソロ演奏をしています。

クリストリーブは最近、クリス・スタンドリングの『Sunlight』にゲスト参加や、デヴィッド・ガーフィールドの『Jazz Outside The Box』の「Sophisticated Lady」でもソロを吹いています。

 

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2020年12月26日 (土)

2020年のベスト3+1

今年紹介した作品の中から、個人的なベスト作品です。

1. Nils 『Caught In The Groove
2. Blake Aaron 『Color And Passion
3. BoneyJames 『Solid
+1. Four80East 『Straight Round

ニルスのぶれないスタイルが頂点を極めたこの作品、「これぞスムーズジャズ」と聴くたびにうなずく曲ばかり。テクニックをひけらかせず、自然体で駆け抜けるグルーヴが充満した演奏が爽快です。

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2020年12月17日 (木)

第63回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品(2020)

第63回グラミー賞の「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門賞は、下記の5作品が候補に選ばれました。受賞作は、2021年1月31日(米国)に発表されます。(※ 記事末尾に結果を追記)

この部門の最近の傾向は、先進的ジャズやルーツ・ミュージックなどジャンルを超越した作品が選ばれています。今回もスムーズジャズのアーティストが選ばれないのは残念です。

1. Christian Scott Atunde Adjuah 『Axiom』

新世代ジャズの革新的トランペット奏者クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアーが、ニューヨークのブルーノートで行ったライブの録音作品です。スコットはこの作品で、3年連続のノミネートになります。

スコットは自身の音楽を、”ストレッチ・ミュージック”と提唱しています。ジャズをルーツに、多様な音楽へ”拡張”させるというコンセプトです。この作品は、そのストレッチ・ミュージックが躍動するライブ演奏を記録しています。

炸裂するバンドのエネルギーは戦闘的、スコットのソロ演奏は慟哭的で、ハートをゆさぶられます。一方で「Songs She Never Heard」は美形のアンサンブルを展開したりと、意表をつく音像の連続です。「Sunrise in Beijing」や「Hunteress」では、バンドのメンバー、フルート奏者エレーナ・ピンダーフューズ(Elena Pinderhughes)の素晴らしいフレージングが衝撃的です。

「Guinevere」のスコットのアドリブ演奏は、同時に「ベスト・インプロバイズド・ジャズ・ソロ」部門の候補に選ばれています。

 

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2020年8月22日 (土)

拙著『スムーズジャズを楽しむ50枚のアルバム』

<お知らせ>

拙著「スムーズジャズを楽しむ50枚のアルバム」についてのお知らせを追記いたします。

【Version 8】をアップデートしました。

ジャケ写真を1枚追加しました。


マーカス・アンダーソン「スタイル・ミーツ・サブスタンス」

掲載ジャケ写真は合計29点になりました。

 

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2020年8月18日 (火)

トム&ジェリー(サイモン&ガーファンクル)についてのミニ研究(その2)

ポールのソロ・アーティスト名は、トゥルー・テイラー(True Taylor)という名前でした。サイモン親子は出来上がったシングル盤の表示を見て驚きました。てっきり、ジェリー・ランディスだと思っていたのです。2人はプロセン氏にクレームしましたが、そのままになったようです。公式には、ポールのトゥルー・テイラー名義の作品はこの2曲のみです。エルビスのコピーとはいえ、溌剌にシャウトする、10代のポールの純真な歌声が活き活きとしています。

トゥルー・テイラーとは、唐突なネーミングのようですが、ポールの祖父、ポール・サイモン(ポールは祖父の名前を引き継いだ)はオーストリア出身の移民で、職業は仕立て屋(Tailar=テイラー)でした。もしかすると、祖父を由来に、プロセン氏かルーが意図的に付けた名前なのかと勘ぐります。

ちなみに、ポールはジェリー・ランディスという名前を、その後もデモ歌手やソング・ライターとして活動している時期に長く使っています。ポール・ケーンと名乗った時代もあります。今ではそれぞれの名前で、多くの非公式の音源が公表されています。

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2020年8月16日 (日)

トム&ジェリー(サイモン&ガーファンクル)についてのミニ研究(その1)

ポール・サイモンとアート・ガーファンクルが16歳の時、トム&ジェリー(Tom & Jerry)の名前で発売したシングル「Hey, Schoolgirl」(1957)は、ビルボードでは最高位49位のヒット曲になり、10万〜15万枚超のセールスを記録しました。ポップ・スターを夢見ていた10代の少年2人が、舞い上がるには充分過ぎる大成功でした。

しかしその後リリースした2枚のシングルはパッとせず、わずか半年で活動を終えます。レコード・ビジネスの現実と、取り巻く「大人」の事情に翻弄されて、2人の友情にも亀裂を残した苦い出来事になりました。2人がフォークソングのデュオとして再結成するのは、6年後の1963年でした。

ポールとアートは、ニューヨーク・クイーンズ地区のハイスクールの同級生で、エバリー・ブラザースの「Hey, Doll Baby」を下敷きに共作したオリジナル曲が「Hey, Schoolgirl」でした。2人に目を止めたのは、マンハッタンのレコード会社、ビッグ・レコード(Big Records)のオーナー、シドニー(もしくはシド)・プロセン(Sidney or Sid Prosen)という人でした。

ビッグ・レコードは、シングル盤をわずか10枚ほどを出しただけの小さなマイナー・レーベル。オーナーのプロセン氏は、自らも歌い、作曲編曲もこなす音楽家でもあり、プロモーター/プロデューサーでした。

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