カテゴリー「コラム」の43件の記事

2024年1月 5日 (金)

第66回(2024)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ②

•『Jazz Hands』Bob James

キャリア60年越えを誇る大御所ボブ・ジェームスの新作は、ヒップホップ界からのアーティスト、ラッパー/歌手のシーロー・グリーンやターンテーブルリストのDJ・ジャジー・ジェフとの共演が話題となった久し振りのソロ名義アルバムです。

グリーンのボーカルをフィーチャーした「Jazz Hands」や、ジャジー・ジェフとキーボード奏者カイディ・テイサム(Kaidi Tatham)との共作「That Bop」は、ヒップ・ホップやブロークン・ビーツといった新潮流と融合してみせたハイライト曲。

近年のツアーで同行しているリズム隊、マイケル・パラッツォ(ベース)とジェイムズ・アドキンス(ドラムス)が今作でサポートを固めていますが、「The Alchemist」(パラッツォ作)はその3人の美技によるリリカルなポストモダン的ジャズ・アンサンブル。「The Otherside」のアコピや、「Mophead」でのフェンダー演奏は、長年聴きなれたジェームス印すいぜんのフレージングがひかります。

サックス奏者デイヴ・コーズが客演した「Come Into My Dream」や、ライヴ録音の「Sea Goddess」ではサックス奏者トム・ブラクストンが加わって、スムーズジャズ・ファンなら聴きのがせない好演。84歳にしてなおダイナミズムを失わない音楽性を発揮した傑作です。

 

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2023年12月29日 (金)

2023年のベスト3+1

2023_best

今年はパンデミックも終息に向かい、リモートでなくリアルなアンサンブルの録音作品が増えてきたように思います。

恒例とはいえ順位をつけるのはおこがましいけれど、個人的なヘビロテを基準に選んでみました。私の2023年ベスト3+1です。

① Andy Snitzer 『A Beautiful Dream
② Skinny Hightower 『Mind Over Matter
③ Euge Groove 『Comfort Zone
次:Four 80 East 『Gonna Be Alright

アンディ・スニッツアーは、鳴ったとたんに空気感が変わるサウンドが秀逸な作品。明るさが増した作風の変化も感じられて、今まで以上に好感度が高まりました。タイトル曲は出色の1曲でアルバムの価値を印象づけています。

スキニー・ハイタワーは、豪快なピアノ演奏がとにかく圧巻。発揮するエネルギーとグルーヴが、底知れない逸材を証明した作品です。

ユージ・グルーヴは、リズム・セクションとのリラックスしたアンサンブルを武器に、かつてないほどに吹きまくる隙のないフレージングに脱帽。熱量に加えて、この人らしいエレガンスが心地いいことこの上なしのキャリアでベスト級の作品。

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2023年12月24日 (日)

第66回(2024)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ①

第66回(2024年度)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門」のノミネート5作品が発表されました。受賞作品の発表は、2024年2月4日です。→(24/2/5追記)『As We Speak』が受賞しました。

  • 『As We Speak』Béla Fleck, Zakir Hussain, Edgar Meyer, Featuring Rakesh Chaurasia

バンジョー奏者ベラ・フレックは、グルーグラスに留まらずジャズやロックにクラシックなど多様なジャンルを超えて活躍する音楽家。グラミー賞でも、カントリーやワールド・ミュージックなど異なる部門で多数の受賞を誇ります。

本作はフレックが、こちらもマルチ・ジャンルで活躍するベース奏者エドガー・メイヤー、インド出身のタブラー(インドの伝統的太鼓)奏者ザキール・フセイン、バンスリー(インドの伝統的バンブーフルート)奏者ラケーシュ・チョウラシアらと組んだ演奏集。フレック、メイヤー、フセインの3人はかつて共演アルバム『The Melody Of Rythm』(2009)を発表していて、今作は14年ぶりのリユニオンとなります。

インドや中央アジアの民族音楽を基軸に、4人が濃厚なインタープレイを展開します。フレックのバンジョーは、ブルーグラス楽器の属性を忘れさせる好演。

「Pashoto 」(フセイン作)では、タブラーとシンクロするパーッカッシブな奏法を披露するバンジョーは圧巻です。この曲は、今回「ベスト・グローバル・ミュージック・パフォーマンス部門」にもノミネートされています。

また、「ベスト・グローバル・ミュージック・アルバム部門」にノミネートされた『This Moment』は、ギター奏者ジョン・マクラグリンが率いる歴史的ユニット、シャクティの46年ぶり再結成スタジオ・アルバムで、こちらにはオリジナル・メンバーであるフセインが参加しています。

 

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2023年1月28日 (土)

第65回(2023)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ②

【23/2/6付追記:受賞作はスナーキー・パピーです(下記★印)スナーキー・パピーの受賞は、第63回グラミー賞での『Live At The Royal Albert Hall』に続いて、通算5回目となります。】

過日の記事に続いて、残りのノミネート2作品を紹介します。

⚫︎『Jacob's Ladder』Brad Mehldau

 ジャズ・ピアノ奏者ブラッド・メルドーの本作は、ジャズの範疇にはおさまらないユニークなソロ作品です。
注目は、プログレッシブ・ロックの選曲です。「Jacob's Ladder」と「Tom Sawyer」は、カナダのバンド、ラッシュの楽曲。「Cogs in Cogs」は、イギリスのバンド、ジェントル・ジャイアントの曲。どちらも70年代から80年代初めに活躍したプログレッシブ・ロック系バンドの代表曲です。

メルドーはピアノに加えて各種シンセサイザーを演奏しています。シンセによるバロック的なソロ演奏もありますが、ボーカルやギターを交えて尖ったプログレッシブ・ロック・サウンドを組み立てています。イエスの「Starship Trooper」の一部や、現役プログレ/メタル・バンド、ペリフェリー(Periphery)の楽曲「Racecar」も構成に取り上げています。

メルドーのオリジナル曲「Herr und Knecht」では、ドイツ語の歌(叫び)が入りジャーマン・ヘヴィメタルな様相です。

メルドーのプログレッシブ・ロックへのオマージュといえる秀作です。

 

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2022年12月25日 (日)

2022年のベスト3+1

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今年はメジャー・アーティストの新譜が出そろった年でした。そんな中からベストを選ぶのも至難のわざですが、毎年恒例の私的なセレクトを次のとおり紹介します。

① リック・ブラウンの『Rick Braun』は、至福の味わいが残るまさにベストな作品。華麗なストリングスに、ハート・ウォーミングなブラウンの吹奏(特にフリューゲルホルン)がたまらない。新曲10曲はベスト盤に匹敵する佳曲揃いです。”ミドル・オブ・ザ・ロード”に徹したこのサウンドこそ、ずっと聴いていたいと思わせてくれます。

② レス・サブラーの『Tranquility』は昨年のリリースでしたが、今年やっとCDを手に入れて”宝物”になったアルバム。ギブソンのジョニー・スミス・モデルを”主役”にしたコンセプトが秀逸で、サブラーのオーセンティックな演奏がたっぷり味わえます。

 

 

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2022年12月18日 (日)

第65回(2023)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品

第65回グラミー賞各部門のノミネート作品が発表されました。「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門では5作品がノミネートされています。
受賞発表は、来年2月6日(米国)の予定です。

● 『Between Dreaming And Joy』 Jeff Coffin

ジェフ・コフィンは、25年越えのキャリアを誇るサックス奏者。バンジョーの名手ベラ・フレックや、ロックのデイヴ・マシューズ、スナーキー・パピーらと共演など、ジャンルを超えて活躍する演奏家です。
この新作は、自作のオリジナル曲を中心に、多数の名うてミュージシャンとコレクティブ的にリモートを駆使して制作されたようです。コフィンが操る多様なリード楽器(サックス、フルート、クラリネット、メロディカなど)演奏が聴きどころです。
「Vinnie the Crow」は、ファンクのうねりにターンテーブルのスクラッチを組み入れたヒップな楽曲。「Tip the Band」でのロベン・フォードのギター・ソロも聴きどころ。「Birds & Magic」では、なんとコーラのボトル(!)を吹いています。
コフィンのクロスオーバー的な音楽性と駆動力が発揮された力作です。

 

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2021年12月30日 (木)

2021年のベスト3+1

今年紹介した作品の中から選んだ、個人的なベスト作品です。

 

 

  1. Dave Koz and Cory Wong 『The Golden Hour
  2. Tony Saunders 『All About Love
  3. JJ Sansaverino 『Cocktails & Jazz

次点 Gary Honor 『Momentum

 

世界のコロナ流行がおさまらない状況でも、多くのアーティストがリモートやワンマン演奏を駆使して作品を制作しました。

デイヴ・コーズとコリー・ウォンのコラボ作品は、貴重といえるスタジオ・ライブの熱量が沸く傑作。ウォンが指揮するサウンド・プロダクションと、コーズの弾けるサックスが有機的に共鳴した名演奏です。

いまやスムーズジャズのベース奏者は多士済々の趣きですが、トニー・サンダースはベース演奏はもとよりサウンド・プロデュースの才能に注目したいアーティストです。本作は、フロント楽器としてのベース演奏が躍動して、サウンド全体のグルーヴが発揮された充実作です。

JJサンサヴェリーノの作品は、緻密な編曲とトップ級のミュージシャンを集めて制作した才能の集積といえる作品です。バー・カクテルのコレクションをテーマにしたコンセプトも秀逸です。

ゲリー・オーナーの久しぶりの作品はリモートで制作されたようですが、グルーヴのドライブ感がリアルに迫る力作です。オーナーのパワフルなサックス演奏はテンションが上がります。

 

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2021年12月29日 (水)

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ②

前記事に続いて、残りの2作品を紹介します。

4. Randy Brecker & Eric Marienthal『Double Dealin'』

ランディ・ブレッカー(トランペット/フリューゲルホルン)とエリック・マリエンサル(サックス)の、初めてのコラボ作品。プロデュースはジョージ・ウィッティ (キーボード)で、作曲/共作からバック・サウンドまで手掛けて本作の要になっています。数曲に、ジョン・パティトゥッチ(ベース)とデイヴ・ウェックル (ドラム)が参加しています。

マリエンサルは、チック・コリア・エレクトリック・バンドのメンバーとして80年代後半にキャリアをスタートしましたが、その時のバンド・メイトがパティトゥッチとウェックルでした。かたやウィッティは、ブレッカー・ブラザースのサポート・メンバーでした。70・80年代のフュージョン・シーンを盛り上げた顔ぶれが集まりました。

「Double Dealing'」は、ワウワウ・エフェクトのブレッカーとパワフルなマリエンサルが激突するベスト・トラック。
「Fast Lane」は、パティトゥッチとウェックルが固める鋭利なリズム・セクションと、ふたりの吹奏も尖ったインター・プレイが圧巻です。
「You Ga (Ta Give It)」は、ブレッカー・ブラザースの『Detente』(1980)に入っていた曲。ディスコ・ビート的なグルーヴに乗って、ふたりが交わすファンキーなバトルが聴きどころ。

現在進行形のスリリングなフュージョンが躍動する名演奏の作品です。

 

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2021年12月26日 (日)

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」ノミネート作品 ①

第64回(2022)グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」部門賞のノミネート5作品が選ばれました。下記に3作品を紹介します。残りの2作品は、後日紹介します。

受賞作は、2022年1月31日(アメリカ時間)に発表される予定です。

(2022/4/7追記)当部門賞は、Taylor Eigstiが受賞しました。下記★印

1. Rachel Eckroth『The Garden』

レイチェル・エックロスは、シンガー・ソング・ライターとしてクロス・ジャンルなソロ作品を発表しているアーティスト。ジャズにもアプローチしたのが近作『The Blackbird Sessions Vol.1』で、ご主人のベース奏者ティム・ルフェーヴル (Tim Lefebvre)とのデュオでジャズのスタンダードを歌っています。

本作は、おそらく初めてのインスト・アルバム(1曲はボーカル入り)で、全曲でキーボード演奏を披露した意欲作です。

共演するアンサンブルは、ルフェーヴルに加えて、サックス奏者ダニー・マッキャスリン(Donny McCaslin)、ギター奏者ニア・フェルダー(Nir Felder)、ドラム奏者クリスチャン・ユーマン(Christian Euman)ら、いずれも気鋭のジャズ・ミュージシャンです。

「Vines」は、4ビートのビーバップからフリーにへ展開するジャズ演奏。エックロスのエレピ演奏が聴きどころです。「The Garden」は、スリリングなインタープレイと達者なアコピが交差する個性的な佳曲。「Oil」は、プログレッシブ・ロックのようで未知の自然界をイメージさせる独特の音楽世界です。

アバンギャルドな音像と伝統的なジャズも融合して、物語性に引き込まれる魅力的な作品です。

 

 

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2021年2月21日 (日)

あのポップス名曲のサックスは誰だ?(Part 5)

1. カラパナ:「(For You)I'd chase a rainbow」(1976)

日本でも人気が高かったハワイのバンド、<カラパナ>のセカンド・アルバム収録曲です。

サックス演奏は、マイケル・パウロ(Michael Paulo)。イントロと間奏のドリーミーなフレージングが爽やかな珠玉のバラード曲です。

パウロは、セカンド・アルバムから<カラパナ>に参加したメンバーです。同じアルバムに収録されたインスト曲「Black Sand」は、パウロのエネルギッシュな吹奏が聴ける代表曲。加速してゆくスピード感のピークで登場するパウロのサックスのかっこよさは絶品です。

パウロは1979年ごろに正式メンバーを外れたようですが、2000年代の再結成にも合流しました。再結成後のスタジオ・アルバム『Blue Album』(2002)にも参加しています。最新のソロ・アルバムは、『Beautiful Day』(2018)です。

 

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