カテゴリー「キーボード」の80件の記事

2024年3月24日 (日)

Erik Verwey & Hermine Deurloo 「About A Home」(2023)

オランダのハーモニカ奏者ハーマイネ・デューローの新作は、ピアノ奏者エリック・ヴェーウェイのトリオに加わりスタジオ録音した演奏集。他メンバーは、ドイツ出身のベース奏者ヘンドリック・ミュラー(Hendrik Müller)とドラム奏者ダニエル・ヴァン・ダレン(Daniel Van Dalen)。

カヴァー1曲をのぞく全10曲はヴェーウェイによる作曲。ヴェーウェイは、映像作品の作曲やクラブなどでの演奏でキャリアをつんだ音楽家です。自身がリーダーのトリオは、今作と同じメンバーでデビュー作『People Flow』(2019)を発表。そのアルバムを聴いてデューローが今回の共演を呼びかけたそうです。

先に出ていたデューローの『Splendor Takes』で、ヴェーウェイをむかえてデュオ2曲を披露していました。その2曲(「What Do You See」と「Mother’s Lament」)は、本アルバムでも新しいテイクで収録されています。

ヴェーウェイの楽曲はシャンソンやタンゴの味わいもある多様な曲が並んで、作曲の才能も光ります。相性のよさを発揮したふたりの上品なインタープレイに引きこまれます。

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2024年3月 3日 (日)

紳士の呼び名でたたえたいラムゼイ・ルイスの生涯『Gentleman of Jazz: A Life in Music』by Ramsey Lewis, with Aaron Cohen (2023)

キーボード奏者ラムゼイ・ルイスは、2022年9月12日に87年の人生に幕を閉じました。生涯にわたり故郷シカゴを拠点に70年にせまるキャリアを重ねて、80アルバムをこえるリーダー作や参加作品を残しました。

本書はルイスのオーラル・メモアール(口述回顧録)で、共著者アーロン・コーエン(Aaron Cohen)が2年以上にわたる本人へのインタビューをまとめたものです。残念なことに、ルイスは本書を手にする前に旅立ちました。多くの関係者へのインタビューも交えて、クラシックを学んだ幼少期からジャズの世界での活躍、時代ごとの作品や音楽活動を中心に、家族のことも触れて語りつくしています。

コーエン氏いわく、60/70年代のジャズ界には破天荒な音楽家が多く、波乱に満ちた人生を過ごした数々のレジェンドが歴史に刻まれています。そんな中で、ルイスは愛する家族や仲間に囲まれて地域の音楽教育にも貢献するなど、紳士的で幸福な人生を送った稀有な存在でありました。

本書の面白さはやはりルイスが明かす名盤や名演奏、共演した音楽家との交流のエピソードの数々です。

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2024年2月17日 (土)

Jayson Tipp 「Table For One」(2023)

1992年に結成されたアンダー・ザ・レイク(UTL)は、長期のブランクやメンバー変更をへて現役で活動する5人組ユニットです。ラフでソリッドな音が魅力で、スリル感をともなうエネルギッシュなアンサンブルです。

近年作品の『Your Horizon Too』(2020)や『Old Friends, New Groove』(2021)は、その持ち味に磨きをかけた秀作です。

今回、オリジナル・メンバーであり中心人物のキーボード奏者ジェイソン・ティップが、キャリア初のソロ・アルバムをリリースしました。

UTLではサックスとギターがフロントをになう演奏曲が多く、リーダー的存在とはいえティップは主にエレピやオルガンでサイドを固めている印象でした。本作ではほぼ全曲アコースティック・ピアノを披露して、今までの印象をいい意味でくつがえしています。

ティップの自作(共作も)によるどの楽曲も明るく、ポップな味つけもあり好感度がグッと上がる会新作になりました。

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2024年1月20日 (土)

Justin-Lee Schultz 「Just In The Moment」(2023)

南アフリカ出身のキーボード/ギターなどマルチ楽器奏者ジャスティン・リー・シュルツは、13歳にしてリリースしたデビュー作が話題になった注目のアーティストです。

デビュー作『Gruv Kid』(2020)は、ボブ・ジェイムス、ジョナサン・バトラー、ナジー、ジェラルド・アルブライト、ピーセズ・オブ・ア・ドリームなど豪華なゲストとの共演にも臆せず奔放に才能を発揮した充実作でした。

ソロ名義2作目となる本作は、ほぼ全曲がジャスティン自身のオリジナル楽曲で、半数以上の曲では4歳年上の実姉ジェイミー・レイ・シュルツによるドラム演奏以外の全ての楽器(鍵盤、ギター、ベース等)をこなしたワンマン・サウンドで作り上げています。その他は、ポール・ブラウンがひきいるバンド・アンサンブルで、デイヴ・コーズやリチャード・エリオットも客演した演奏です。

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2023年10月 2日 (月)

Brian Simpson 「Soul Connection」(2023)

Soul_ブライアン・シンプソンの新作は、聴きなれたはずのピアノの音粒が新鮮で、ナイーヴなタッチにためいきが出る充実作です。

ブライアン自身の単独プロデュースによる今作は、共作を含む自作曲を中心に、サポートは近作で常連のアレックス・アル(ベース)マイケル・ホワイト(ドラムス)レイモン・イスラス(パーカッション) アダム・ホーリー(ギター)レイ・フラー(ギター)ヤロー・レヴィー(ギター)らがそつのないサウンドを固めています。

注目は、過去作品でも客演していたサックス奏者スティーヴ・アラニーズ(Steve Alaniz)を半数以上の曲で起用していることです。

アラニーズは南カリフォルニア出身の、ジャズやポップスのセッションマンとして活躍してきたサックス(フルートも)奏者で、TVや映画音楽、音楽教育にも携わっている音楽家です。ソロ作品は無いようですから、シンプソン作品が表舞台への登場といえそうです。

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2023年9月30日 (土)

Skinny Hightower 「Mind Over Matter」(2023)

Mindover_キーボード奏者スキニー・ハイタワーの新作は、全曲アコースティック・ピアノ演奏を繰り広げる意欲作です。オリジナル楽曲はポジティヴなムードをまとう佳曲がならび、ピアノ演奏はこれまでの印象を変えるエネルギッシュな展開からエレガントな味わいまでさまざまな表情を披露しています。

旧作ではピアノだけでなくオルガンやヴィヴラフォンなどの多様な鍵盤を駆使して、R&Bやソウルのエッセンスで粘着性のグルーヴ感を満たす音楽性でした。

本作では、ジャズの主流派を彷彿とするピアノ演奏に終始して、サウンドは打ち込みやオーバー・ダブ(自身によるドラムとベース演奏)で作り込んでいますが、全編でオーガニックなムードが貫かれています。

ゲストには所属レーベル(トリピン・リズム・レコーズ)メイトのゲリー・オーナー(サックス、フルート)や、ヒップホップ系バイオリン奏者ジョッシュ・ヴィエッティが参加して、いずれも印象深い起用が光ります。

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2023年8月13日 (日)

Greg Manning 「A Song For Peace」(2023)

Gmanning_asongforpeaceキーボード奏者グレッグ・マニングの新作(全10曲)は、既発表のシングル(6曲)を中心に新曲やカバー曲を加えたベスト盤的といえる充実作です。

近年は他アーティストのプロデュースや演奏サポートでも活躍が著しいマニングですが、その交流を裏付ける顔ぶれが多数ゲスト参加しています。
トランペット奏者イリヤ・セーロフ、ベース奏者ジュリアン・バーンやサックス奏者のジミー・レイド(Jimmy Reid)にジュダー・シーリー(Judah Sealy)、ベテランのカーク・ウェイラムらがフィーチャーされています。

ビートやホーン・セクションにハンドクラッピングも交えて、キャッチーリフを強調したサウンドがキラキラと輝きます。ダンスチューンの躍動感とポップの華やかさをブレンドした粒ぞろいの曲が並んでいて、ここしばらくヘビロテにハマりました。

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2023年4月 8日 (土)

Michael Broening 「Never Too Late」(2023)

本作は、プロデューサーとして活躍著しいマイケル・ブローニングの初ソロ・アルバムです。

ロサンゼルス出身のブローニングは、アリゾナ州フェニックス市郊外に自身のスタジオをかまえて活動する音楽家です。キーボード奏者であり作編曲家およびプロデューサーとして、キャリアは20年を超えます。

この人のクレジットは以前から多くの作品で目にしていたので、ただものではないなと注目していました。過去に紹介した作品では、シンディ・ブラッドリーの『The Little Things』(2019)やレブロンの『Undeniable』(2019)は、ほとんどブローニングの作曲/演奏/プロデュースによる秀作で、洗練された音楽性が記憶に焼きついています。

その2作に限らず、プロデューサーとしての仕事は、マリオン・メドウズを皮切りに、スティーヴ・オリバー、マイケル・リントン、ティム・ボウマン、リン・ラウントゥリー、アルティア・ルネ、ランディ・スコット、ゲリー・オーナーら他数々のアーティストを手がけています。

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2022年11月 6日 (日)

Peter Kater 「Soul Story」(2022)

ピアノ奏者ピーター・ケーターは、ニューエイジ界を代表するベテラン・アーティストです。25歳でのデビュー作品(ソロ演奏)『Spirit』(1983)以来、発表したアルバムは50作品以上に及び、キャリアは約40年を誇ります。グラミー賞(ニューエイジ部門)のノミネートは14作品を数え、ベスト・アルバム賞に2作品が選ばれています。

2018年度第60回のグラミー賞で『Dancing on Water: solo piano improvisations in A432』(2017)が、2020年度第62回のグラミー賞では『Wings』(2020)が、それぞれ受賞作品(ベスト・ニューエイジ・アルバム)に輝いています。

いままで、コラボ(ネイティブアメリカン・フルート奏者カルロス・ナカイとのデュオなど)や、アンサンブルからシンフォニーとの共作など様々なスタイルで作品を残していますが、ソロ演奏も多く手掛けています。ソロ演奏では自作楽曲の演奏に加えて、デビュー作から取り組んでいるのがインプロビゼーション(即興演奏)です。

ケーターは数年前より、たったひとりのために即興演奏を行うというユニークな活動を続けています。対象となる「ひとり」を家に招いたり、リモートによるコミュニケーションを経て曲を作り、即興演奏を披露するそうです。そのひとの人生についていろいろと話をしたうえで、イメージを膨らませてメロディーを紡ぎ出すといいます。その取り組みを、ケーターは「ピアノ・リーディング」と名付けています。『Dancing on Water』はその活動から生まれた曲をまとめた作品であり、今作は続編となる即興演奏集です。

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2022年7月24日 (日)

Jonathan Fritzén「Piano Tales」(2022)

スウェーデンのピアノ奏者ジョナサン・フリッツェンの7作目となる新作です。

Ballads』(2017)の次作『Bach and Jazz』(2020)は、ヨハン・セバスティアン・バッハの曲をトリオ編成で演奏した企画的作品だったので、本作はオリジナル楽曲集として久しぶりの作品です。

この人らしいポップでロマンチックな佳曲が並んでいます。なにより、全曲で隙間も埋め尽くすように弾きまくるピアノの素晴らしい演奏が堪能できます。

アルバム・タイトルがあらわすように、10曲の全てにピアノにまつわるタイトルが付けられているのがユニークな趣向です。

「Key(キー)」や「Pedal(ペダル)」「Strings(ストリングス)」「Grand(グランド)」といった単語をもり込んだ曲名は、ピアノを即座に連想させます。

「Hammers Of Love」のハンマーや、「88 Ways」は鍵盤数のことで、「Resonance」は共鳴、「Safe and Sound」は「安全無事」を意味する慣用句と、洒落たタイトルにセンスが光ります。

「Sustain United」は右端のペダル(音を伸ばすサステイン・ペダル)を指して、「Una Corda」は左端のペダル(柔らかい音色にする別名ソフト・ペダルで楽譜にu.c.と記される)のことのようです。なるほど的なタイトルが秀逸です。

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