カテゴリー「キーボード」の68件の記事

2021年9月12日 (日)

Chris Geith 「Invisible Reality」(2021)

クリス・ガイス(もしくはギース)はイタリア育ちでミラノの音楽学校に通い、ニューヨークのマンハッタン音楽学校を卒業したキーボード奏者です。

2000年代になりMP3方式のデジタル音楽配信が普及すると、インディーズのアーティストでも自主的に作品を発表できるようになりました。ガイスは、自主制作したデビュー・アルバム『Prime Time』(2006)で当時の配信サービスで広く注目を集めました。

その後も主に自主制作で、『Timeless World』(2008)『Island Of A Thousand Dreams』(2010)『Chasing Rainbows』(2014)『Well Tempered Love』(2016)などのアルバムを発表しています。演奏家としても、ピーター・ホワイト、ユージ・グルーヴ、スティーヴ・オリバー、ヴィンセント・インガラらと共演をしています。テレビ、ラジオやコマーシャルへの音楽提供の活動もしているようです。

この新作アルバムは、自身の作曲した15曲を収めた力作です。ガイスのピアノ演奏を主役に、全てのサウンドと録音ミックスにいたるまでひとりで手掛けています。

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2021年7月24日 (土)

Brian Simpson 「All That Matters」(2021)

ブライアン・シンプソンの新作は、スティーヴ・オリバーとのコラボ作品「Unified」(2020)をはさんで、ソロ名義としては「Something About You」(2018)以来の9作目となるアルバムです。輝くようなピアノの音粒が際立つ充実作です。

近作では常連の、ニコラス・コール、スティーヴ・オリバー、オリバー・ウェンデルらとのコラボで構成された全10曲。従来と変わらぬ路線とはいえ、それぞれとの共演が円熟度を増してサウンドの完成度に反映されているようです。

ゲストの、ナジー(フルート)、スティーヴ・アラニーズ(サックス)、ロン・キング(トランペット)、ジム・ピサノ(サックス)、ヤロン・レヴィー(ギター)らのソロ演奏も聴きどころになっています。特に、初めて聴くアーティストですが(※)、スティーヴ・アラニーズ(Steve Alanis)のサックス演奏は、輪郭が鮮明な奏音に思わず引きつけられました。

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2021年3月14日 (日)

Gregg Karukas 「Serenata」(2021)

グレッグ・カルーキス(※)の新作は、初めてとなる全曲ソロ・ピアノの作品集です。半数の8曲はカバー演奏で、ブラジルのアーティスト、ミルトン・ナシメントとドリ・カイミの関連作品を取り上げて、アルバムのテーマにすえています。残りの7曲は、過去曲の再演を含めたオリジナル曲です。

演奏は、おおらかで明るいタッチの音粒にあふれています。ナシメントやカイミの楽曲の美しいメロディを、ピアノだけでシンプルに際立たせて、奥深さも感じさせる演奏です。ロマンチックでも内省的にならず、この人の従来のスムーズジャズ・サウンドに通じるハッピーなムードが、ソロ・ピアノでも堪能できる秀作です。

ミルトン・ナシメントが、ロー・ボルジェスら同郷のアーティスト達とコラボした作品『Clube de Esquina』(1972)と続編『Clube de Esquina 2』(1978)は、ブラジルのポピュラー音楽(MPB)の名盤と評価の高い作品です。カルーキスはその2アルバムから4曲、「Tudo O Que Vocé Podia Ser」「Club de Esquina No.2」「Paisagem da Janela」「Nascente」を取り上げています。

カルーキスはその2枚のアルバムを愛聴盤に挙げています。自身のアルバム『Looking Up』(2005)には「Corner Club/Clube de Esquina」というオリジナル曲が収められていますが、その2枚の愛聴盤から名付けたとアルバムに記しています。

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2021年1月 3日 (日)

Jazz In Pink featuring Gail Jhonson 「Joy !」(2020)

新年明けましておめでとうございます。今年も、グッとくるスムーズジャズの作品を紹介していきます。

フィラデルフィア出身のキーボード奏者ゲイル・ジョンソンが率いる<ジャズ・イン・ピンク>は、全員女性ミュージシャンからなるスムーズジャズ・バンドです。デビュー・アルバム『1st Collection』(2014)には、アルティア・ルネ(フルート)マリエア・アントワネット(ハープ)カレン・ブリッグス(バイオリン)らが参加していますが、チーム編成は流動的で、ライブでは、キム・スコット(フルート)シンディ・ブラッドリー(トランペット)なども共演しています。

この新作は、そのバンド名<ジャズ・イン・ピンク>を掲げていますが、ゲイル・ジョンソンのソロ作品というべき内容になっています。サポート陣として、キム・ウォーターズ(サックス)ポール・ジャクソン・ジュニア(ギター)マリオン・メドウズ(サックス)ネイト・ハラシム(シンセサイザー/ギター)キム・スコット(フルート)などトップ級アーティストを迎えています。

ジョンソンの才能が発揮された素晴らしい作品です。ジョンソンのピアノは、粒立ちのいい音色とジャジーなフレージングが魅力です。全インスト10曲はジョンソンのオリジナルで、フィリー・テイストのR&Bやジャズ/フュージョンを骨組みにしたスマートな曲が並んでいます。

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2020年7月 5日 (日)

Oli Silk 「6」(2020)

オリ・シルクの新作です。『Where I Left Off』(2016)に続くソロ”6”作目。

ゲストは、ヴィンセント・インガラ(サックス)、ジェラルド・アルブライト(ベース)、キエリ・ミヌッチ(ギター)、ジェフ・カシワ(フルート)、ダーレン・ラーン(サックス)、エル・カトー(女性ボーカリスト。ロレイン・カトーの名前で、ジャミロクワイやリサ・スタンスフィールドインコグニートなどのバック・ボーカルを務めていた人)を迎えています。常連の、マーク・ハイメス(ギター。かつてシンプリー・レッドにも参加していた人)、ゲイリー・オナー(サックス)らも脇を固めています。

曲ごとに多彩なゲストを迎えての音作りは、シルクの近年作品の手法です。『Razor Sharp Brit』(2013)からは、多くのメジャー級アーティストをフィーチャーしてきました。ゲストを固めて厚いサウンドを作るというより、ゲストとのレスポンスを重視したインタープレイが特徴といえます。

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2020年5月23日 (土)

Skinny Hightower「Blue Moon」(2020)

スキニー・ハイタワーの前作『Retrospect』(2018)は、みなぎる創造力が溢れた力作で、強く印象に残ったアーティストでした。この新作は、CDで二枚組、全24曲のボリュームで、さらなる音楽性の才気煥発に圧倒されます。
全曲が新作オリジナルで、編曲からキーボードを中心にほとんどの演奏を、ハイタワーがこなしています。

本人のホーム・ページには、興味深い制作経緯が書き綴られています。それによると、前作の後、うつ状態に悩んだことを明らかにしています。愛妻が所有していたレコード・コレクションを聴き込んで救われたといいます。ウォー、アイザック・ヘイズ、アース・ウィンド&ファイアー、カーティス・メイフィールド、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、といった70年代の名作の数々でした。全てを深く聴き、感動とともに自分を取り戻したと。それらの楽曲を分析することに至り、その後最終的に100曲をレコーディングしたそうです。その中から、本作の24曲が選ばれました。

全曲が、一気呵成で創られたエネルギーにあふれています。サウンドは粗削りなテクスチャーを感じますが、湧き出す発想を記録したリアリティが迫ります。聴き込んだという名作のエッセンスに気が付きますが、オマージュではなく、消化して生み出されたオリジナリティに他なりません。

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2020年2月22日 (土)

Eddie Bullen 「Kaleidoscope」(2020)

エディ・バレンは、カリブ海グレナダ出身で、カナダ・トロントを拠点に活躍するピアニストです。ソロ作品は、初作『Nocturnal Affair』(1996)から5作品を発表。プロデューサー/作編曲家でもあり、自身のレーベル「サンダー・ドーム・サウンズ」も運営しています。

この新作は、前作『Spice Island』からおよそ5年ぶり、6作品目となるソロ・アルバム。10曲のオリジナル楽曲を収録しています。

バレンのアコースティック/エレキ・ピアノは、硬質でクリアな音像が特徴。常連のバンド・メンバーがリズム・セクションを固めて、躍動感のあるグルーヴを引き立てています。実息のクインシー・バレン(キーボード/ギター)が、ほぼ全曲でギタリストとして参加しています。

バレンはCDのライナーノーツで、「この作品は70年代、80年代、90年代の新しいジャズ・サウンドに影響を受けている。インスト曲がダンス、ポップ、R&Bのチャートをにぎわした時代だった。」と述べています。その時代へのオマージュのように、輪郭が際立つメロディやフレーズが随所に現れます。バレンのルーツを反映して、トロピカルなムードも漂います。

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2019年10月13日 (日)

Mark Etheredge 「Connected」(2016)

マーク・エサレッジのデビュー・アルバム「Change Coming」(2012)は、オリジナルの全曲を自ら歌うシンガー・ソング・ライターとしてのボーカル作品だった。スティーリー・ダンを思わせるソリッドなサウンドと曲調が印象的で、80年頃のボズ・スキャッグスのようなアダルト・コンテンポラリー路線を志向したような作品だった。

その次作品がこの『Connected』(2016)で、エサレッジのピアノとキーボードが主役の全10曲インストゥルメンタルの演奏作品。ボーカリストからキーボード奏者へ方向転換というわけだが、目の覚めるようなピアノ演奏とバンド・アンサンブルで上質なスムーズ・ジャズ作品になった。共作を含めた全10曲はエサレッジのオリジナル曲で、歌詞を載せて歌えるようなメロディーは、シンガー・ソング・ライターとしての才能がリンクしている。

プロデュースはポール・ブラウン。都会的で洗練されたサウンドに統一されていて、エサレッジのピアノ奏者としての才能を引出したのはブラウンの手腕。全曲が同じメンバーのリズム・セクションで固められている。ギターはポール・ブラウン、ベースはロバート・バレー、ドラムスはゴーデン・キャンベル、パーカッションはリッチー・ガルシアという面子。エサレッジのロマンティックなフレージングと、ソリッドなリズム・セクションがブレンドするアンサンブルが素晴らしい。

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2019年10月 6日 (日)

David Benoit 「David Benoit And Friends」(2019)

デイヴィッド・ベノワは、デビューが1977年だから40年を超えるキャリアのピアニストである。リーダー・アルバムは35作品を数える。大ベテランだけれどその音楽は枯れた味が増すというより瑞々しい味わいがさらに際立つ稀有なアーティストだ。

プロデュースや映画音楽、交響曲と広範囲な活動も注目に値するけれど、やはり彼のピアノ演奏は最大の魅力。ビル・エヴァンスやデイヴ・ブルーベックといった伝統を受け継いで、80年代以降のボブ・ジェイムスやデイヴ・グルーシンなどコンテンポラリーなジャズ・スタイルの系譜を引き継いでいる貴重な正統派だと思う。

そのデイヴィッド・ベノワの新作は、交流の深いベテラン・アーティストや、フレッシュな若い世代のゲストも迎えた多彩な作品。

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2019年9月16日 (月)

Scott Wilkie 「Brasil」(2019)

ポップスやジャズでは定番の企画アルバムといえば、クリスマスもしくはホリデイ・ソング集。それとブラジル曲集というのも定番だろう。キャリアを続けるアーティストは、必ずといってもいいほど、どちらかもしくはどちらも手がける。個人的にはクリスマス・アルバムというのはあまり興味がわかないが、ブラジルをテーマにした企画盤はいつでも注目している。ブラジル音楽に造詣が深い訳ではないが、ボッサ系サウンドのリラックスした開放感には理由なく惹かれてしまう。演るのが贔屓のアーティストならなおさらだ。さて今回のスコット・ウィルキーのブラジル企画作品も、すでに私の愛聴盤になった秀作。

スコット・ウィルキーは、キャリアの長いコンテンポラリー・ジャズ・ピアノ奏者。ソロ・デビュー・アルバム『Boundless』(99年)から『Studio LIVE』(17年)まで7枚のアルバムをリリースしている。自身のスタジオとレーベルを持っていて、南カリフォルニアを中心に活動している。彼のピアノは、ジョー・サンプルや、デイヴ・グルーシン、デヴィッド・ベノアら名手の系譜に通じるスタイル。デビュー当時から、ラス・フリーマン、ジェフ・カシワ、ポール・ジャクソンJR、エリック・マリエンサルといったフュージョン/コンテンポラリー・ジャズのトップ・ミュージシャンと共演して、西海岸系の爽快なサウンドが特徴だ。

ソロ8枚目となるこの新作は、新旧のブラジル楽曲を中心にした作品。ブラジル・テイストと相まって、ウィルキーと演奏陣の軽快な音楽性が際立つ素晴らしい演奏集。

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