カテゴリー「ハーモニカ」の2件の記事

2023年3月12日 (日)

Hermine Deurloo 「Splendor Takes」(2023)

Splendortakes

ジャズ・ハーモニカのレジェンド、トゥーツ・シールマンスの亡きあと、後継者のポジションを競うように実力派のハーモニカ奏者が活躍しています。

スイスのグレゴア・マレ(Gregoire Maret)、イタリアのジョゼッペ・ミリチ(Giuseppe Milici)、フランス出身でニューヨークで活動するイヴォニック・プレン(Yvpmmocl Prene)らは、いずれも新作のたびにチェックを入れる人たちです。

ちなみに、ミリチの近作はエンニオ・モリコーネ楽曲集『Plays Ennio Morricone』(2021)。プレンの最新作『Listen!』(2023)は、オリジナル曲とマイルス・デイビスやシナトラのレパートリーも取り上げたジャズ・コンボでの演奏集。

さて、アムステルダム出身の女性ハーモニカ奏者ハーマイネ・デューローも、注目したいアーティストです。

デビュー作『Crazy Clock』(2005)から5枚のソロ作品を発表しているキャリアの持ち主。近年の『Riverbeast』(2019)は半数が自身のオリジナル曲で、ドラム奏者スティーヴ・ガッドも参加した力作でした。当時のツアーの様子はYouTubeで発表されています。

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2012年6月 9日 (土)

Toots Thielemans 「90 Yrs.」(2012)

トゥーツ・シールマンス、1922年生まれの90歳である。90歳を祝して「90年」と題された最新のライブアルバム。バックサポートは、カレル・ボエリー(p)、ヘイン・ヴァン・ダヘイン(b)、 ハンス・ヴァン・オーシュタハウトゥ(ds)のトリオ。カレルのトリオの、リリカルで透明感のある演奏は聴きものなのだが、やっぱり主役はトゥーツで、「わき役」に徹したようなトリオの演奏が奥ゆかしくて、お互いのインタープレイがほほえましい。

トゥーツのハーモニカは、いつも通り、こころに沁みるというのか、時に童謡のしらべのような音選びにうっとりしてしまう。クロマチックハーモニカ特有のレバーを使った半階音の「ひねり方」がこの人の演奏の魅力。このライブでも随所にそれが出てきて、その嫌みの無いクロマチックの使い方に、ググッとくるのだから、90歳の演奏なんてとても思えない。

M-10「I Do It For Your Love」はポールサイモンの名曲を演奏した、曲調にふさわしいコンテンポラリーでスムースな演奏。曲は1975年のポールの名盤「Still Crazy After All These Years」に入っていたラブソング。ちなみに、同じアルバムの「Night Game」という曲では、客演したトゥーツのハーモニカが光っていたっけ。

M-7「What A Wonderful World」は、サッチモの名曲で、トゥーツの奏でるあのメロディが美しい。M-6「In Your Own Sweet Way」はデーブ・ブルーベックの曲、正統的なジャズのインタープレイが聴ける。M-4「Wave」M−8「One Note Samba」はアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲、ボサノバリズムにハーモニカは軽やかで、しぶい。

90歳を超えて、この人の演奏は、てらいの無い、ピュアな音色というのか、ハートフルというのか。なんだか心が温かくなる演奏。「100 Yrs」のライブアルバム、出してほしいなあ。

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