カテゴリー「フルート」の8件の記事

2022年4月 3日 (日)

Kim Scott 「Shine!」(2022)

フルート奏者キム・スコットの5枚目となる新作です。前作『Free to Be』(2019)の路線を引きついで、安定感の増したサポート陣とのアンサンブルに、スコットのフルートが優雅に飛翔する秀作です。

前作同様に主な演奏は、ケルヴィン・ウーテン(キーボード、プロデュース)を中心にショーン・マイケル・レイ(ベース)、ジェームズ・”PJ”・スプラギンズ(ドラムス)、エリック・エシックス(ギター)らが固めています。

ゲストに、グレッグ・マニングアダム・ホーリーブレーク・アーロンジョナサン・バトラーらが参加しています。

冒頭を飾る「Back Together Again」(マニングとの共作)は、疾走感のあるリズムに乗ってフルートが飛び回るキャッチーなナンバー。「Shine!」(ホーリーとの共作)はゆるめのテンポに、ギター(ブレーク・アーロン)と交差するクールな佳曲。

「Off The Top」(ウーテンとの共作)は常連メンバーとのアンサンブルが光る、エネルギッシュな表情も見せるスコットのフレージングが絶妙の好演です。

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2019年9月 1日 (日)

Kim Scott 「Free To Be」(2019)

スムーズジャズ界のトップ級女性フルート奏者といえば、アルティア・ルネレーガン・ホワイトサイド、キム・スコットの3人。いずれも巧者の3人だが、なかでもスコットの演奏はフルートの特性が際立ったフェミニンなフレージングが特徴。この新作は、前作「Southern Heat」に比べて、そんなフェミニンなムードが漂っていて自然体で作られたことが伝わる秀作。

前作に続いてプロデューサーは、ケルビン・ウートン。ウートンは、R&B系プロデューサー/アレンジャー/マルチ・ミュージシャンとして、R&B/ソウル界の男性歌手アンソニー・ハミルトン、女性歌手のジル・スコット、アース・ウインド&ファイアーなどのメジャー・アーティストのアルバムに参加している。このアルバム全9曲中7曲が、ウートンがプロデュース/キーボード演奏で関わっている。

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2018年10月12日 (金)

Althea Rene 「Unstoppable」(2017)

フルート奏者アルティア・ルネは、出身地のデトロイトで、群保安官を10年以上務めたことがあるという異色の経歴の持ち主。とは言え、保安官を志していた訳では無いはず。父親は、モータウンのセッション・ミュージシャンで、サックス奏者だった。その父親の影響があり、フルート奏者を目指したという。2000年のデビュー作品「Flute Talk」以来、5枚の作品をリリースして、今や、スムーズジャズ界の女性フルート奏者としては、第一人者だ。

6枚目となるこの新作は、プロデュースや作曲を、ルネ自身と、何人かの注目アーティストとコラボして作り上げた秀作。ルー・レイン、 マーカス・ハンター、ターハン・ヴァンダイク、ニコラス・コール、ダーリック・ハーヴィンといった、いずれも新進気鋭のアーティストの参加が、この作品の要になっている。リン・ラウントゥリー、キエリ・ミヌッチ(スペシャルEFX)、ティム・ボウマングレッグ・マニング、などメジャー級のアーティストのゲスト参加も豪華だが、なんといっても、ルネのフルートが、まるでシンガーのような、「歌唱力」と言えるメロディアスなフレージングを繰り出すのが最大の魅力。

オリジナル曲の「Unstoppable」や、「Gypsy Soul」、「Now and Forever」など、R&Bムードのコンテンポラリー・ソングは、いずれも佳曲揃い。「What Cha Gonna Do With My Loving」(ステファニー・ミルズ)、「Rain」(シスターズ・ウィズ・ヴォイシス、原曲はジャコ・パストリアス)といったカバー曲のセンスも唸らせる。どの曲も、ライブ的なグルーヴが伝わる演奏陣のアンサンブルが、素晴らしい。特に、「Another Star」(スティーヴィー・ワンダー)の7分超のカバー演奏は、一聴の価値ある、ベスト・トラックだ。今回のレコーディングのオール・スター的メンバー(ルネのフルート、ヴァンダイクのピアノ、ハンターのドラムス、ジェームス・カーターのサックス、など)の演奏は、アドリブの応酬も情熱的で、目の覚めるようなグルーヴには圧倒されること、半端じゃ無い。

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2018年8月 6日 (月)

Dave Muse 「Forgotten Journey」(2018)

フルート奏者デイヴ・ミューズの「Firefall Revisited」は、彼が在籍していた「ファイアーフォール」時代の曲を再演して、ダイナミックなフルート演奏を披露した秀作だった。スタジオ録音のソロ作品としては、30年超ぶりという長いブランクを経ての3作目だったが、早くも、この新作がリリース。

今回は、1曲のカバー演奏(レイ・チャールズの「Unchain My Heart」)を除いて、他全9曲はオリジナル曲で占められた意欲作。フルート演奏も、さらにパワーアップしたところを聴かせてくれる力作だ。プロデュースは、前作にも参加していた、キーボード奏者ロン・ラインハートとの共同制作。ほとんどの曲も、ミューズと共作している。ラインハートは、スムーズジャズ系のサポート・ミュージシャンで、リック・ブラウン、リチャード・エリオット、ピーター・ホワイトらと共演している。最近では、リック・ブラウンの「Around the Horn」のタイトル曲の共作者として、キーボード演奏でも参加していた。

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2016年10月 2日 (日)

Kim Scott 「Southern Heat」(2016)

フルート奏者キム・スコットの3作目となる新作は、マイケル・ジャクソンの「Billie Jean」のカバーで始まる。MJの楽曲は、スムーズジャズのアーティストが多く取り上げるけれど、このスコットのフルートが主役の演奏は、ガツンと来る素晴らしい秀作バージョン。

M2「Fantastic Voyage」も、ファンク・バンド、レイクサイドのヒット曲(1980)のカバーで、ボーカリストとしてのスコットの歌声がキュート。M4「It’s Your Time」でも、ボーカリストとしても只者でないところを披露している。曲は、キャッチーなAORソングで、ヘビーローテーションしたい佳曲。

M3「Sizzle」は、トランペット奏者リン・ラウントゥリーとの共作で、ラウントゥリーも客演している、スムーズジャズなインスト曲。縦横無尽に飛び回るフレージングが躍動的なフルートが感動的。M5「Foregiveness」はバラード曲で、フルートのフレーズが優しい、ヒーリング・チューン。

M6「Two Become One」は、ディープなソウル・ムードのインスト曲で、ベースとフルートのフレージングの応酬が、かっこいい。こんな濃いいソウルをフルートで聴かせるところが真骨頂かな。M9「Goove with Me」は、ラップが絡む、ヒップホップ。こんなスタイルでもフルートはバッチリ決まっている。

バラエティに富む曲や洗練されたアレンジ、フルートだけでなくボーカルもフレッシュで、なかなかのイチオシ作品。

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2016年8月20日 (土)

Dave Muse 「FIREFALL Revisited」(2016)

フルート奏者デイヴ(デイヴィッド)・ミューズは、かつて70年代後半に活動していた西海外のロックバンド「ファイアーフォール」のメンバー。ファイアーフォールのデビュー作「Firefall」(1975)のクレジットにはミューズの名前は無いものの、この時から実質的なメンバーの一員。セカンド作「Luna Sea」(1977)では、6人のメンバーの一人としてクレジットされている。

ファイアーフォールのヒット曲には、「You Are the Woman」(1976)、「Just Remember I Love You」(1977)、「Strange Way」(1978)などが、ビルボードの10位あたりまでチャートインした。初期のアルバム作品は1980年まで5作品を残して一度解散。その後、再結成を経て、メンバーは変わったとはいえ今も、ミューズ自身もメンバーとして演奏活動しているらしい。70年代後半は、イーグルス、ドゥービーブラザース、など、ウェストコースト・ロックが人気を博した時代。同時代のファイアーフォールも、メジャーではないけれど、 初期作品は「隠れた名盤」。

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2016年3月21日 (月)

Jef Kearns 「The Flute」(2016)

フルートという楽器は、ソフトなトーンが魅力だが、サックスのメジャーなポジションに比べると、残念ながら分が悪い。とは言え、ジャズの伝統的には、フルートの著名奏者は、意外と多い。ハービー・マンはもちろん、ヒューバート・ロウズ、ボビー・ハンフリー、デイブ・バレンタイン、ケント・ジョーダンなど、フュージョン時代にも活躍したアーティストは多いのだ。

最近のスムーズジャズでは、キム・スコット、アルシア・ルネ、レーガン・ホワイトサイド、などいずれも女性フルート奏者が多い。男もいるぞ、というわけで、このトロントのフルート奏者ジェフ・カーンズ。ジェフの特徴は、ヒップホップを洗練させたソウル・ミュージックでフルートを演るところ。

「ザ・フルート」と名付けられた、この新作は、既発表の作品の新ミックスを含む5曲入りのミニ・アルバム。新曲は「Hazy」の1曲で、インスト・バージョン(M1)と、歌入りバージョン(M5)が入っている。「Hazy」は、クールなフレージングが美しいフルートの音色と、重量感のあるリズムビートが印象的な、アーバン・ソウルな佳曲。ミディアム・テンポだけれど、この洗練されたムードが心地いい。キャッチーなフック・メロディーが印象的なM2「Harricane」、ジャズをヒップに解釈したM3「Soulfisticated」、バラードのM4「Lavender」と、いずれも既発表の作品の新ミックスなどの再録だが、クールなソウル・ムードは一貫性があって変わらない。秀逸な5曲だけれど、ちょっと満足できない。フル・アルバムの登場を期待したい。

 

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2014年8月 1日 (金)

Ragan Whiteside 「Quantum Drive」(2014)

女性フルート奏者、レーガン・ホワイトサイドの新作は、アーバンなR&Bの秀作であり、彼女のクールなフルートの演奏に感激する作品。

ほとんどの曲(12曲中8曲)で、プロデュース、作曲とキーボード演奏で参加しているのがボブ・ボールドウィンで、サウンドはほとんどボールドウィン・カラーと言ってもいい作品。

ボールドウィンは、今までも彼自身の作品でホワイトサイドを重用している。最近作「Betcha By Golly Wow」や、「Twenty」でも、彼女のフルートが聴ける。「Twenty」では、「Chameleon 3000」でおなじみのテーマ・メロディーを奏でていた彼女のフルートが印象的。ホワイトサイドの過去作品、「Class Axe」(2007)、「Evolve」(2012)も、ボールドウィンがプロデュースで関わった作品なので、「秘蔵っ子」という感じだろう。

この新作も、ボールドウィンの路線を継承する作品だけれど、ホワイトサイドの硬派なフルート・フレーズが聴き所で、技巧派のジャズ・アーティストの作品だと感じられる。

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