カテゴリー「サイモン&ガーファンクル」の9件の記事

2020年8月18日 (火)

トム&ジェリー(サイモン&ガーファンクル)についてのミニ研究(その2)

ポールのソロ・アーティスト名は、トゥルー・テイラー(True Taylor)という名前でした。サイモン親子は出来上がったシングル盤の表示を見て驚きました。てっきり、ジェリー・ランディスだと思っていたのです。2人はプロセン氏にクレームしましたが、そのままになったようです。公式には、ポールのトゥルー・テイラー名義の作品はこの2曲のみです。エルビスのコピーとはいえ、溌剌にシャウトする、10代のポールの純真な歌声が活き活きとしています。

トゥルー・テイラーとは、唐突なネーミングのようですが、ポールの祖父、ポール・サイモン(ポールは祖父の名前を引き継いだ)はオーストリア出身の移民で、職業は仕立て屋(Tailar=テイラー)でした。もしかすると、祖父を由来に、プロセン氏かルーが意図的に付けた名前なのかと勘ぐります。

ちなみに、ポールはジェリー・ランディスという名前を、その後もデモ歌手やソング・ライターとして活動している時期に長く使っています。ポール・ケーンと名乗った時代もあります。今ではそれぞれの名前で、多くの非公式の音源が公表されています。

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2020年8月16日 (日)

トム&ジェリー(サイモン&ガーファンクル)についてのミニ研究(その1)

ポール・サイモンとアート・ガーファンクルが16歳の時、トム&ジェリー(Tom & Jerry)の名前で発売したシングル「Hey, Schoolgirl」(1957)は、ビルボードでは最高位49位のヒット曲になり、10万〜15万枚超のセールスを記録しました。ポップ・スターを夢見ていた10代の少年2人が、舞い上がるには充分過ぎる大成功でした。

しかしその後リリースした2枚のシングルはパッとせず、わずか半年で活動を終えます。レコード・ビジネスの現実と、取り巻く「大人」の事情に翻弄されて、2人の友情にも亀裂を残した苦い出来事になりました。2人がフォークソングのデュオとして再結成するのは、6年後の1963年でした。

ポールとアートは、ニューヨーク・クイーンズ地区のハイスクールの同級生で、エバリー・ブラザースの「Hey, Doll Baby」を下敷きに共作したオリジナル曲が「Hey, Schoolgirl」でした。2人に目を止めたのは、マンハッタンのレコード会社、ビッグ・レコード(Big Records)のオーナー、シドニー(もしくはシド)・プロセン(Sidney or Sid Prosen)という人でした。

ビッグ・レコードは、シングル盤をわずか10枚ほどを出しただけの小さなマイナー・レーベル。オーナーのプロセン氏は、自らも歌い、作曲編曲もこなす音楽家でもあり、プロモーター/プロデューサーでした。

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2019年3月22日 (金)

アート・ガーファンクルが歌った映画挿入歌

アート・ガーファンクルは、「キャッチ22」や「愛の狩人」などの映画に出演した俳優でもある。シンガーとしても映画との関係が深く、映画や映像作品の主題歌や挿入歌を歌っている。それぞれのサントラ盤では聴くことができるが、彼自身のオリジナル・アルバムには収録されていない曲も多い。(※印が未収録曲)

 

1.「Bright Eyes」(1979)

アニメ映画「Watership Down(ウォーターシップダウンのうさぎたち)」(1978)の挿入歌。作詞作曲はマイク・バット。イギリスではチャート1位を記録する大ヒットになった。マイク・バットは、初めからガーファンクルを想定して曲を作ったが、了解してもらえるとは思っていなかったとか。ガーファンクルのアルバムは、英国盤「Fate For Breakfast」(1979)に収録。

1999年には、TVシリーズのアニメがリメイクされて、同曲を、アイルランドの大人気ポップ・グループ、ボーイゾーンのメンバーだったスティーヴン・ゲイトリーがソロで歌った。彼のソロ・アルバム「New Begining」(2000)に、そのバージョンが収められている。なお、ゲイトリーは、2009年に33歳で急死。

バットが自身の作品を集めた「A Songwriter's Tale」(2008)では、セルフ・カバーした同曲が聴ける。

余談だが、ネットフリックスと英BBCが、同作品を3Dアニメーションで新作リメイクして、去年の12月に公開。テーマ曲は、サム・スミスの歌う「Fire on Fire」という曲(作曲はサム・スミスとスティーヴ・マックの共作)。

 

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2019年2月 9日 (土)

「母と子の絆」(ポール・サイモン)は、「ヴェトナム」(ジミー・クリフ)のアンサー・ソングでは?

ポール・サイモンの「母と子の絆(Mother and Child Reunion)」と、ジミー・クリフの「ヴェトナム(Vietnam)」の、関連について、個人的な考察です。

2012年7月15日、ポール・サイモンはイギリスのハイド・パークで野外コンサートを行いました。サイモンが、「僕の個人的なヒーローを紹介します」と言って、ジミー・クリフがゲストで登場。2人で、「ヴェトナム」と「母と子の絆」を、まるでメドレーのように歌いました。(そのライブ盤「The Concert in Hyde Park」は、コンサートから5年後にリリースされました。)2人の共演は感動的なサプライズでしたが、歌われた2曲のストーリーが、密接にリンクしていることに多くの観客が注目したはずです。この2曲の繋がりで、「母と子」の解釈がやっと分かったように思えます。サイモンの「母と子」は、クリフの「ヴェトナム」に触発されて作った可能性が高く、そのサイモンの曲は、クリフの曲への「アンサー・ソング」であるとさえ思うのです。

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2018年12月16日 (日)

ポール・サイモンの評伝 ③:『Homeward Bound: The Life of Paul Simon』by Peter Ames Carlin(2016)

ポール・サイモンの評伝を読んでみる「シリーズ」です。(勝手にやってるのですが)

今年出たロバート・ヒルバーン著の『Paul Simon:The Life』に先立つこと、2016年に出たこの本は、ピーター・エイムズ・カーリンという人の書いた評伝です。米国音楽雑誌「Rolling Stone」誌が毎年選んでいる、「ベスト・ミュージック・ブックス」の2016年度の1冊にも選ばれています。著者のカーリン氏は、米国の音楽ジャーナリストで、他の著作には、ブルース・スプリングスティーン、ポール・マッカートニー、ブライアン・ウィルソンについて著した各評伝があります。

この本は、ポール本人は認めていない、つまり「非公認」の評伝です。ポール自身へのインタビューも認められず、ポール・サイドからは出版に対する圧力もあったそうです。それでも、膨大な過去のインタビューや記事を掘り起こし、関係者への取材を通して、ポールの足跡を驚くほど詳細に調べ上げた力作になっています。「非公認」とはいえ、面白さは一級の評伝です。

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2018年9月 3日 (月)

ポール・サイモンの評伝 ②:邦訳されている評伝

ロバート・ヒルバーン著の最新評伝『Paul Simon:The Life』は、残念ながら、まだ邦訳出版されていない。ポール・サイモンやサイモン&ガーファンクルの評伝で、過去に邦訳されているものもいくつかある。ヒルバーンの評伝でも、「参考文献」にリストアップされている評伝で、日本語で読めるのがこの3冊。

『ポール・サイモン』(パトリック・ハンフリーズ著、野間けい子訳、音楽之友社、88年)は、『The Boy in the Bubble; A Biography of Paul Simon』(by Patrick Humphries、1988)の訳本。今から30年前の著作で、時系列的には「グレイスランド」(1986)に至るまでの評伝となっている(「The Boy in the Bubble」は「グレイスランド」の収録曲名)。著者のパトリック・ハンフリーズは、ポップスやロックのアーティストを対象にした多くの評伝を著している、英国在住の音楽ライター。彼が著した評伝には、ビートルズ、エルビス・プレスリー、トム・ウェイツ、フェアポート・コンベンション、リチャード・トンプソン、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ニック・ドレイク、など多数。近年も、ロニー・ドネガン(ロック誕生前50年代のスキッフルのアーティスト)の評伝を出している。

この評伝は、当時の社会背景や、音楽業界の潮流の解説に比重をおいて、ポールの半生を追跡している。ポールのアルバムごとの収録作品を、著者の考察で分析しているところが特色。エピソードとしては、「グレイスランド」にまつわるくだりが本書のハイライトになっている。80年の国連決議で、南アフリカへのボイコット政策に、芸術、音楽、スポーツなども含まれることなり、音楽業界も翻弄されて行く。ポールの「グレイスランド」にまつわる活動も、「非難」を受けながらも、南アの音楽を取り入れたその音楽性への評価と、ポールの音楽家としての革新的な姿勢が語られるところが、読みどころ。

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2018年7月29日 (日)

ポール・サイモンの音楽人生を振り返る必読の評伝、『Paul Simon : The Life』by Robert Hilburn(2018)

ポール・サイモンは、今年の2月に、演奏ツアーからの「引退」を発表した。5月から始まった全米や欧州をまわるツアーは、「Homeward Bound - The Farewell Tour」と名付けられ、文字どうりの引退ツアーとなっている。大掛かりなツアーは辞めても、「小規模なパフォーマンス」や、レコーディングの音楽活動は続けるようで、安心だが。音楽活動は60年にも及び、色あせない名曲の数々と、華々しい実績を積み重ねてきて、今年には77歳を迎える。本書は、その引退表明に合わせたように、タイミング良く出版された、そのポール・サイモンの評伝である。その名曲の数々に魅了されて来たファンにとって、読む価値のある良書だ。

著者は、ポップス音楽評論家のロバート・ヒルバーン。ロサンゼルス・タイムズ紙で30年以上に渡り、ポップスの評論を担当したキャリアの持ち主。他に、ジョニー・キャッシュについての評伝などの著作がある。本書は、ポール自身が承諾したという、「公式」と言ってもいい評伝だ。著者による、ポール自身への直接インタビューは、3年間を費やし、信頼関係の上に書かれた労作である。加えて、家族や友人、関係者への取材や、膨大なメディア記録の掘り起こしを通して、冷静に事実関係に基づいて描いた著者のストーリーテリングに、引き込まれて読了した。

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2018年2月 3日 (土)

『What Is It All But Luminous』Art Garfunkel 著(2017)

アート・ガーファンクルの自身による伝記である。半生を振り返った伝記だが、音楽活動の解説より、彼自身の生活や内面の考察に比重を傾けて書いた、「私的」な内容の伝記である。

学生時代のポール・サイモンとの出会いや、トム&ジェリーのデビュー、S&Gの成功、映画俳優としての活躍、ソロアルバムの制作、S&Gの再結成、といった彼のプロフェッショナルな功績については、時間的なつながりにとらわれず、フラッシュバックのように語っている。彼の偉大な音楽的成功さえも、アメリカ大陸やヨーロッパのハイキング横断といった私的な活動や、家族のことと並列して、すべてを人生のエピソードとして、内省的な考察を焦点に語られる。

散文的な文章スタイル、メタファー的な引用を交えた「詩」で表現される文章の連続は、正直言って、オーソドックスな伝記のスタイルと(かなり)異なり、読みやすいとは言えないが、そういったユニークな表現方法からして、アートの人間性がうかがえる。

かつての恋人の女優ローリー・バードの自死や、父親や兄弟の死、ポール・サイモンの実母の死去、マイク・ニコルズの死去、といった知人の死去と、一方で、妻のキャサリン・セルマックと、2人の息子への家族愛。彼の半生のストーリーとしては、その「対比」が印象的だ。

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2012年12月 2日 (日)

Art Garfunkel 「The Singer」(2012)

敬愛するアート・ガーファンクルの2枚組ベストアルバム。アートのベストは、今までも数多く、今回も新曲2曲を除くと新しい音源はないのだけれど、本人が選んだ珠玉の全34曲はマストディスク。

もう71才になるらしい。最近はのどを壊したとかで、もう歌えないのではと心配していたから、このアルバムに入った新曲2曲が嬉しい。どちらの2曲も、マイア・シャープがプロデュースしたトラック。マイア・シャープは、2002年のアルバム「Everything Waits to Be Noticed」で共演したシンガー・ソング・ライター。

その新曲、「Lena」が白眉。問題を抱えた主人公、レナ。彼女の哀れみを歌う、ジーニアスなアートの歌声のなんと美しいこと。もう一曲の新曲、「Long Way Home」は、マイア・シャープの作品で、アートが彼女の作品を敬愛しているのが伝わってくる。

このベストアルバム、ポール・サイモンが去年出したベスト「The Songwriter」に答えるように、タイトルは「The Singer」、まるで対をなしているよう。CDに封入されたブックレットに映っている、小学生かと思う肩を組んだ2人の写真が微笑ましい。

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